養生訓19

園(その)に草木(くさき)をうへて愛する人は、朝夕(ちょうせき)心にかけて、水をそそぎ土をかひ、肥(こえ)をし、虫を去(さり)て、よく養(やしな)ひ、其(その)さかえを悦び、衰(おとろえ)へをうれふ。
草木は至(いた)りて軽(かろ)し。わが身は至りて重し。豈(あに)我身を愛する事、草木にもしかざるべきや。
思はざる事、甚(はなはだ)し。
夫(それ)養生の術をしりて行なふ事、天地父母につかへて孝をなし、次にはわが身、長生安楽のためなれば、不急なるつとめは先(まず)さし置(おい) て、わかき時より、はやく此術をまなぶべし。
身を慎み生を養ふは、是、人間第一のおもくすべき事の至(いたり)也(なり)。

意訳

園芸を好きな方は、朝夕に心がけて水をかけたり、肥料をやったり、虫を取ったりして注意を払いながら、その成長を喜び、枯れたら悲しむ。植物でもそうなのだから、自分の体を大切にするのは当たり前のことです。自分の健康は父母も喜びます。なにより、自分自身の喜びでもあります。若いうちから健康法を学ぶことです。健康法を学ぶことは人生で最も大切なことです。

通解

庭に草木を植えて愛する人は、朝晩心を込めて水をやり、土を耕し、肥料を施し、害虫を駆除してよく育て、その成長を喜び、衰えを憂う。
草木は自然に軽やかであり、私たちの身体は自然に重い存在です。だからこそ、自分自身を愛することは草木にも劣らない重要なことです。
無関心な態度は非常に危険です。
したがって、養生の術を知り、まず天地や両親に孝を尽くし、次に自分自身のために長寿と幸福を追求するために、不必要な義務は後回しにして、若いうちからこの術を学ぶべきです。
身を慎み生を養うことは、人間にとって第一に重要なことです。

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