養生訓30(巻第一総論上)
「ここを以(もって)養生の術を行なひ、いかにもして天年をたもち、五十歳をこえ、成(なる)べきほどは弥(いよいよ)長生して、六十以上の寿域(じゅいき)に登るべし。
古人,長生(ちょうせい)の術ある事を、いへり。
又、人の命は我にあり。天にあらずとも、いへれば、此術(このじゅつ)に志(こころざし)だに、ふかくば、長生をたもつ事、人力を以(もって)いかにも、なし得(う)べき理あり。うたがふべからず。只(ただ)気あらくして、慾をほしゐままにして、こらえず、慎(つつしみ)なき人は、長生を得(う)べからず。」
意訳
健康で長生きすることが人生の最高幸福です。ですから、本来自分が持って生まれた天命を全うするために養生の術を行うのです。そうすれば、六十歳以上の長寿になることができます。昔の人も言っています。養生の術を学んで実行すれば必ず、長寿になると。疑ってはなりません。
疑って、実行しない人には、結果は出ないでしょう。
通解
これによって、養生の術を行いどのようにして天寿を保ち、五十歳を超え、本来の寿命を遥かに上回って六十歳以上の長寿を迎えるかを説明します。
古代の人々も長生きの方法があると言っています。また、人の命は自分自身にかかっているものであり、天に頼るものではないとも言えるでしょう。したがって、この術に心を傾け、真剣に取り組むことで長生を保つことは人間の力で実現可能です。疑いようのない理に基づいています。ただし、気を怠り欲望を放任し自制心がない人は長寿を手にすることはできないでしょう。
「寿域」とは
「寿域」は日本語の言葉で、「人が生きることができる期間」や「寿命」を指す言葉です。一般的に、ある個人や生物が生まれてから死ぬまでの時間の長さを表現する際に使用されます。