養生訓414

艾炷(がいちゅう)の大小は、各、其人(そのひと)の強弱によるべし。壮(さかん)なる人は、大なるがよし、壮数(そうすう)も、さかんなる人は、多きによろし。虚弱(きょじゃく)に、やせたる人は、小にして、こらへやすくすべし。多少は所によるべし。熱痛(ねつつう)をこらゑがたき人は、多くすべからず。大にして、こらへがたきは、気血をへらし、気をのぼせて、甚(はなはだ)害あり。やせて虚怯(きょこう)なる人、灸のはじめ、熱痛(ねっつう)をこらへがたきには、艾炷(がいちゅう)の下に塩水を多く付(つけ)、或(あるいは)塩のりをつけて五七壮、灸し、其後、常の如くすべし。此如すれば、こらへやすし。猶(なお)も、こらへがたきは、初(はじめ)五六壮は、艾(がい)を早く去(さる)べし。此如すれば、後の灸こらへやすし。気(き)升(のぼ)る人は一時に多くすべからず。明堂灸経(めいどうきゅうけい)に、頭(あたま)と四肢(しし)とに多く、灸すべからずといへり、肌肉(きにく)うすき故也。又、頭と面上(めんじょう)と四肢に灸せば、小(ちいさ)きなるに宜(うべ)し。灸に用る火は、水晶を天日(てんぴ)にかゞやかし、艾(がい)を以(もって)下に、うけて火を取べし。又、燧(ひうち)を以、白石或(あるいは)水晶を打て、火を出すべし。火を取て後、香油(こうゆ)を燈(ともしび)に点(てん)じて、艾炷(がいちゅう) に、其、燈(ともしび)の火をつくべし。或、香油にて、紙燭(しそく)を、ともして、灸炷(きゅうちゅう)を先(まず)身につけ置て、しそくの火を付(つ)くべし。松(まつ)、栢(かしわ)、枳(きこく)、橘(みかん)、楡(にれ)、棗(なつめ)、桑(くわ)、竹(たけ)、此、八木の火を忌(いむ)べし。用ゆべからず。

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