養生訓53

およそ人の身は、よはくもろくして、あだなる事、風前の燈火(とぼしび)のきえやすきが如し。あやうきかな。つねに、つつしみて身をたもつべし。いはんや、内外より身をせむる敵、多きをや。
先(まず) ,飲食の欲、好色の欲、睡臥(すいが)の欲、或(あるいは)、怒(いかり)、悲(かなしみ)、憂(うれい)を以(もって)身をせむ。
是等(これら)は皆,我身の内よりおこりて、身をせむる欲なれば、内敵なり。
中につゐ(い)て飲食・好色は、内欲より外敵を引入(ひきい)る。
尤(もっとも)おそるべし。風寒暑湿(ふうかんしょしつ)は、身の外より入(はいり)て、我を攻(せめ)る物なれば外敵なり。
人の身は金石(きんせき)に非(あら)ず。やぶれやすし。
況(いわんや)内外に大敵をうくる事、かくの如にして、内の慎(つつしみ)、外の防(ふせぎ)なくしては、多くの敵にかちがたし。
至(いた)りてあやうきかな。
此故(このゆえ)に人々長命(ちょうめい)をたもちがたし。

意訳
男性は、外に出ると七人の敵がいるといいます。
現代では、女性も同じでしょう。
交通事故をはじめ不慮の事故も多いのです。

細菌やウィルスなどの感染症もあります。
ある意味、不可抗力かも知れない。
しかし、ストレスの軽減や生活習慣の改善は自分の意志でコントロールすることができます。
自分で出来る内なる防衛をしないと必ず、外敵を引き寄せることになるのです。
まずは、自己管理が外敵から身を守る基本です。

通解

人の身は非常に脆くて傷つきやすく、あっという間に消え去ることがあります。危険な存在です。常に注意して身を守るべきです。なぜなら、内側からも外側からも多くの敵が身を襲う可能性があるからです。

まず、飲食の欲望、性欲、睡眠の欲望、または怒りや悲しみ、心配など、これらの欲望は身を危険にさらす原因となります。これらはすべて自分の内側から起こる欲望であり、内部の敵と言えます。

飲食や性欲は特に注意が必要で、これらの欲望は外部の敵を引き寄せる原因となります。風や寒さ、暑さ、湿気などは身の外部から攻撃してくるものであり、外部の敵と言えます。

人の身は金石ではなく、非常に壊れやすいものです。ましてや内外から大きな敵に襲われることを考えると、内部を慎み、外部を防ぐことがなければ多くの敵に打ち勝つことは難しいでしょう。

そのため、人々は長寿を保つことが難しいのです。

「風前の燈火」とは、

「風前の燈火」という表現は、日本語のことわざや言葉の一つで、非常に危険で不安定な状況や状態を指す言葉です。この表現は、何かが崩れたり、消えたりする危険性が高い状態を表現するために使われます。具体的には、以下のような状況や状態を指すことがあります:

危機的な状況: 何かが取り返しのつかない状態にあるとき、最後の希望やチャンスが非常に脆弱で、風で吹き消されるような状況。

経済的な困難: 経済的な危機や困難な状況にある人や組織が、最後の希望に頼っている状態。

希望が薄い状況: ある目標や望みが達成するのが難しいと思われるとき、それを守るための微弱な希望や可能性がある状態。

この表現は、状況が非常に危険で不確かなときに使用され、しばしば希望や努力が必要な状況を強調するために使われます。風前の燈火のように、風が吹けば簡単に消えてしまう状態を表現しています。

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