養生訓121

養生の要(よう)は、自欺(じき)ことを、いましめて、よく忍ぶにあり。自欺とは、心に、すでに、あしきとしれる事を、きらはずしてするを云。あしきとしりてするは、悪をきらふ事、真実(しんじつ)ならず、是(これ)自欺なり。欺(あざむ)くとは真実ならざる也。食の一事(いちじ)を以(もって)いはゞ(ば) 、多く、くらふがあしきとしれども、あしきをきらふ心(こころ)実(じつ)ならざれば、多くくらふ。是、自欺也。其(その) 余事(よじ)も皆これを以(もって) しるべし。

意訳

悪いことと知りながら我慢できなくなり行動してしまう。これは、心から悪いことと思ってないからです。例えば、過食してしまうのは、本当に悪いと思っていないからです。養生の道は我慢する忍耐にあります。

通解

養生の重要な要点は、自分を欺くことを心に留め、よく忍耐することにあります。ここでの「自欺」とは、心の中で悪いと認識しているのに行動することをいいます。また、「欺く」とは真実でないことを指します。食事を例に挙げると、たとえ多くの食べ物を摂ることが悪いと認識していても、多くの食べてしまうことです。これは自己欺瞞の一例です。世の萬の事も同様です。

自欺(じき)
自分の良心に反した言動を、それと知りながらすること。自己欺瞞

「自己欺瞞(じこぎまん)」は、自分自身を欺くこと、あるいは自分を騙して現実から逃れることを指します。これは、現実の厳しい事実や自分の認識したいくつかの真実を無視したり、都合よく解釈したりする傾向を指します。自分を守るために、不都合な事実から逃れようとする心のメカニズムとも言えます。これが続くと、現実とのギャップが広がり、問題を解決するのが難しくなることがあります。

養生訓

前の記事

養生訓120
養生訓

次の記事

養生訓122