養生訓99(巻第二総論下)
凡(すべて)の事、十分によからんことを求むれば、わが心のわづらひとなりて楽なし。禍(わざわい)も是よりおこる。又、人の我に十分によからん事を求めて、人のたらざるをいかりとがむれば、心のわづらひとなる。又、日用の飲食・衣服・器物(きぶつ)・家居(かきょ)・草木の品々(しなじな)も、皆(みな)美をこのむべからず。いさゝかよければ事たりぬ。 十分によからん事を好むべからず。是、皆わが気を養なふ工夫(くふう)なり。
意訳
自分に完璧を求めてはいけません。苦痛のもとになります。不幸のもとです。自分も苦しいですが周囲も不幸にします。日常生活でも、少しの不自由ぐらいが良いです。それが、自分の気を養う工夫につながります。
通解
すべての事柄において、極端に完璧なことを求めると、自身の心が不安定になり、逆に楽しみが失われてしまいます。また、禍(災難)も、このような心の状態から生じることがあります。同様に、他人の行動や状態を完璧にすることを求め、その期待通りにならない場合、心に不安が生じます。
さらに、日常の飲食や服装、生活用品、住居、植物の品々なども、すべて完璧であることを求めるのではなく、少しだけ問題があってもそれで十分であることを理解すべきです。極端な完璧主義ではなく、程よいものを好むことが、気を養う工夫となります。
気づき
老後においても、完璧主義者の方を見かける時があります。一生懸命で尊敬に値するのですが、それが幸せかどうかは、その人の価値観により異なります。私の老後は、少し、ゆっくり生きて行く方を選びたいものです。