養生訓32(巻第一総論上)
「用心きびしくして、つねに内外の敵をふせぐ計策(けいさく)なくむば,あるべからず。
敵に,かたざれば、必(かなら)ず、せめ亡(ほろぼ)されて身を失(うしな)ふ。
内外の敵にかちて、身をたもつも、其術(そのじゅつ)をしりて、能(よく)ふせぐによれり。
生れ付(つ)たる,気(き)つよけれど、術をしらざれば身を守りがたし。
たとへば,武将の勇(いう)あれども、知(ち)なくして兵(へい)の道をしらざれば、敵に,かちがたきがごとし。
内敵(うちてき)にかつには、心つよくして、忍(にん)の字を用ゆべし。忍は,こらゆる也。飲食・好色などの欲は、心つよくこらえて、ほしままに,すべからず。心よはくしては内欲(ないよく)に,かちがたし。
内欲に、かつ事は猛将の敵を,とりひしぐが如くすべし。是(これ)内敵にかつ兵法なり。」
意訳
目標を達成したり、自分を防衛するには、何事も戦術と戦略が必要です。
蛮勇では、身を守れないことを歴史が教えてくれています。
そして、戦術と戦略を実行するには強い意志が必要です。
同じように、健康を保ち、病に勝つには、まず、自己管理を徹底することです。
心を強くして、過度の欲望を節制することです。
通解
用心深く、常に内外の敵を防ぐ計策を持たなければなりません。油断すれば必ず攻撃されて身を失ってしまうでしょう。内外の敵に対して身を守るには、その術を知り防ぐことが重要です。
生まれついた気力はあっても術を知らなければ身を守ることは難しいです。例えば、武将は勇気があっても戦術を知らなければ敵に勝つことは難しいです。同様に、内敵に対しても心を強く持ち忍耐力を発揮することが必要です。忍耐はあらゆることに通じるものです。飲食や性欲などの欲望ついては心を強く保ち過度の行いを避けるべきです。心が弱いと内部の欲望に勝つことが難しいです。
内部の欲望に立ち向かうことは猛将の敵と対峙するかの如くすべきです。これが内部の敵に対する戦術となります。
「計策」とは
「計策」は戦略や計画を指す言葉です。具体的な文脈に応じて異なる意味を持つことがあります。以下にいくつかの一般的な意味と使い方を示します:
戦略的な計画: 「計策」は、特定の目標を達成するために立てられる戦略や計画を指すことがあります。たとえば、ビジネスや軍事作戦などの領域で、成功を収めるための戦術や戦略を指すことがあります。
策略: 「計策」は、相手を出し抜くための策略や巧妙な手段を指すこともあります。これは、競争的な状況や対立の中で利用されることが多い言葉です。
問題解決の方法: 問題解決の文脈で、「計策」は特定の課題や問題に対する解決策や方法を指すことがあります。計画を立てて問題を解決するためのアプローチを指すことがあります。
とりひしぐ とは
つかみつぶす。おしつぶす。こと
気づき
人は、目標が無くなれば、老いが早まると聞いたことがあります。
逆に、年齢に関係なく、人生の目標が明確な人は、いつまでも若々しく見えるそうです。
思うに、目標がある人は、その達成のために、自己のあらん限りの能力を使い、戦術と戦略を駆使して、全力で立ち向かうからだと思います。