養生訓55

「外敵に,かつには、畏(おそれ)の字を用て早くふせぐべし。たとへば,城中にこもり、四面に敵をうけて、ゆだんなく敵をふせぎ、城をかたく保(たもつ)が如くなるべし。
風寒暑湿(ふうかんしょしつ) にあはば、おそれて早く、ふせぎ、しりぞくべし。
忍の字を禁じて、外邪を、こらえて久しくあたるべからず。
古語(こご)に「風を防ぐ事、箭(や)を防ぐが如くす」といへり。

四気(しき)の風寒(ふうかん)、尤(もっとも)おそるべし。
久しく風寒(ふうかん)にあたるべからず。凡(およそ)是(これ)外敵をふせぐ兵法なり。内敵に、かつには、けなげにして、つよくかつべし。外敵をふせぐは、おそれて早く、しりぞくべし。けなげなるは、あしし」

意訳

外敵が攻めてくる場合、早めに対策をすることが大切です。
まず、防備を固め、戦いの準備を怠らないことです。
台風などの天災についても同じことが言えます。
天災という外敵を防ぐには、畏(おそ)れて油断しないことです。
そして、頑張らず、逃げる勇気も必要です。

通解

外敵に対しては、畏れの心を持ち早く防ぐべきです。例えば、城に籠城して四方から敵を受け止め、決して怠らずに敵を防ぎ、城を固く守るような心構えが必要です。

風や寒さ、暑さ、湿気にさらされた場合は、すぐに恐れて防ぎ、避けるべきです。忍耐の心を抑えて外部の邪気に久しくさらされることは避けるべきです。古い言葉に「風を防ぐことは、矢を防ぐのと同じである」とあります。つまり、風や寒さといった外邪にも同様に警戒し、早めに対処するべきです。特に四気の風寒は非常に厄介ですから、久しく風寒にさらされないようにすることが重要です。これらが外敵を防ぐ兵法となります。

内敵に対しては、勇敢で強く立ち向かうべきです。外敵を防ぐ場合は、恐れて早く避けることが大切です。そして、内敵に対しては、忍耐強く、つよく立ち向かうべきです。

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