養生訓20

「養生の術は、先(まず)わが身をそこなふ物を去(さる) べし。身をそこなふ物は、内慾と外邪となり。内慾とは飲食の慾、好色の慾、睡(ねむり)の慾、言語をほしゐままにするの慾と、喜(き)・怒(ど)・憂(ゆう)・思(し)・悲(ひ) ・恐(けふ)・(けふ)驚(きょう)の七情の慾を云。外邪とは天の四気なり。風寒暑湿を云。内慾をこらゑて、すくなくし、外邪をおそれてふせぐ、是を以(もって)、元気をそこなはず、病なくして天年を永(なが)くたもつべし。」

意訳

健康法の一番は、身体を損なう原因を取り除くことにあります。
損なう原因は、大きく二つあります。それは、自身の問題と外因によるものです。
自身の問題は、欲望です。外因は、自然環境の問題です。
欲望のまま暮らすことを少なくして、気候や環境の変化に注意すれば、いつも、元気で病気もなく長寿になるのです。

通解

養生の術は、まず自分自身を害するものを避けるべきです。自分自身を害するものとは、内的な欲望や外的な邪気です。内的な欲望には飲食の欲望、性的な欲望、睡眠の欲望、自己の言葉を自由にする欲望、喜び・怒り・悲しみ・思い・憂い・恐れ・驚きといった七つの感情の欲望が含まれます。外的な邪気とは風、寒さ、暑さ、湿気などの四つの気候要素です。内的な欲望を抑えて少なくし、外的な邪気を恐れて防ぐことによって、元気を損なわず、病気を起こさずに長寿を保つことができます。

「風寒暑湿」は、古代中国の医学や健康に関連する理論で使われる概念です。これらの要素は、体の調和と健康を理解し、疾患の起因や治療を考える際に重要な要素とされています。以下にそれぞれの要素を説明します。

風(風邪、風の要素):
風は、体の外部から吹く風という自然現象と、風邪として知られる疾患を指す二つの側面があります。体に外部から風が侵入することで風邪を引くことがあり、風邪の症状は通常、寒さや発熱、喉の痛み、鼻づまりなどが含まれます。風邪を防ぐために、体を適切に暖かく保つことが重要とされています。

寒(寒さ、寒冷の要素):
寒は、体を冷やす要素を指します。寒さにさらされることで、筋肉のこわばり、体の血流の低下、関節炎などの症状が引き起こされる可能性があります。健康を保つためには、寒冷な気象条件に適切に対処し、体を保温することが大切です。

暑(暑さ、暑熱の要素):
暑さは、高温の気象条件や過度な暑さによって引き起こされる症状を指します。暑さにさらされることで、体温調節が困難になり、熱中症や脱水などの健康問題が発生する可能性があります。暑さに対処するために、適切な水分摂取や涼しい場所での過ごし方が重要です。

湿(湿気、湿潤の要素):
湿は、湿気や湿潤な気象条件に関連しています。湿度が高い環境では、カビや細菌の繁殖が促進され、健康問題が発生する可能性があります。湿度の高い場所で適切な衛生状態を維持し、湿気による健康への影響を軽減することが重要です。

これらの要素は、古代中国の伝統的な医学や健康の理論で、体調のバランスを保つために考慮され、風邪や病気を予防し、治療するための基本的な概念として重要視されています。

 

 

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