養生訓39

「人の元気は、もと是(これ) 天地の万物を生ずる気なり。
是、人身の根本なり。
人、此(これ) 気にあらざれば生ぜず。生じて後は、飲食、衣服、居処(きょしょ)の外物(がいぶつ)の助(たすけ)によりて、元気養はれて命をたもつ。
飲食、衣服、居処(きょしょ)の類も、亦、天地の生ずる所なり。
生るるも養はるるも、皆(みな)天地父母の恩なり。
外物を用(もちい)て、元気の養とする所の飲食などを、かろく用ひて過さざれば、生付(うまれつき)たる内の元気を養ひて、いのちながくして天年を、たもつ。
もし、外物の養をおもくし過せば、内(うち)の元気、もし外(そと)の養にまけて病となる。病おもくして元気つくれば死す。たとへば、草木に水と肥(こえ)との養を過(すご)せば、かじけて枯るるがごとし。
故に、人ただ心の内の楽を求めて、飲食などの外の養をかろくすべし。外の養おもければ、内の元気損ず。」

意訳

人の生命力は、自然界のエネルギーと同じです。
だから、自然界の助けによって生きているのです。
人の身体は自然界から養分をもらっているから、過度に摂り過ぎれば病気になるのです。
例えば、草木に水や肥料をやり過ぎれば枯れてしまうようなものです。
だから、心の充実感を求めて、過食の楽しみを控えることが健康のためなのです。

通解

「人の元気は、元々天地の万物を生み出す気から成り立っています。この気こそが人の身体の根本です。人はこの気があれば生きることができ、生まれた後は飲食・衣服・住居などの外的な物質によって元気を養い、命を維持します。飲食・衣服・住居のような外的なものもまた、天地が生み出すものです。生まれることも、養われることも、すべては天地である親である神の恩寵です。

外的な物質を用いて元気を養うためには、飲食などを適度に摂取して過ごす必要があります。それによって、生まれつき持っている内なる元気を養い、長寿を保つことができるのです。逆に、外的な物質の養いを過度にしすぎると、内なる元気が失われ、病気にかかってしまいます。病気が深刻になり、元気が回復しない場合は死に至ることもあります。まるで草木が水と肥料を過剰に与えられると枯れてしまうように。

だから、人は心の内にある喜びを求め、飲食など外的な養いを適度にするべきです。外的な養いに固執しすぎると、内なる元気が損なわれてしまいます。」

 

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