養生訓38

「人の命は我にあり、天にあらずと老子(ろうし)いへり。
人の命は、もとより天にうけて生れ付たれども、養生よくすれば長し。養生せざれば短かし。然(さ)れば長命ならんも、短命ならむも、我心のままなり。身つよく長命(ちょうめい)に生れ付たる人も、養生の術なければ早世(そうせい)す。
虚弱にて短命なるべきと見ゆる人も、保養よくすれば命長し。
是皆、人のしわざなれば、天にあらずといへり。
もしすぐれて天年みじかく生れ付たる事、顔子(がんし)などの如なる人にあらずむば、わが養(やしない)のちからによりて、長生する理(り)也(なり)。
たとへば、火をうづみて炉(ろちゅう)中に養へば久しくきえず。風吹く所にあらはしおけば、たちまちきゆ。蜜橘(みつきつ)をあらはにおけば、としの内をもたもたず、もしふかくかくし、よく養なへば、夏までもつがごとし。」

意訳

老子も、「人の寿命は天にあらず。」と言っています。
例え、生まれつき病弱でも、そして、人生の途中で病に苛(さいな)まれたとしても、これから、自己管理を行えば、十分に長生き出来ます。
例えば、火も風があるところでは、すぐ消えますが、暖炉などでは、なかなか消えません。
柑橘類(かんきつるい)も、冷暗所(れいあんしょ)で管理すれば、長く持てます。

通解

老子も言っているように、人の寿命は天命によるものではありません。つまり、生まれつき病弱であったり、人生の途中で病気に苦しまされたとしても、自己管理を行えば、十分に長生きすることができます。

たとえば、火は風が吹く場所ではすぐに消えてしまいますが、暖炉などのような適切な場所ではなかなか消えません。同様に、柑橘類も冷暗所で適切に管理すれば、長く新鮮さを保つことができます。

このように、適切な自己管理や環境への配慮によって、人間も長寿を享受することが可能であることを教えてくれています。人生においては、自らの生活や健康に気を配り、バランスの取れた生活を送ることが大切だと言えるでしょう。

「人の命は我にあり、天にあらず」とは

「人の命は我にあり、天にあらず」という言葉は、個人の生命や運命に対する考え方を表現しており、以下のような意味や解釈が一般的です。

人の命は自分自身にかかっている: 「我にあり」という部分は、自己責任や自己決定を強調しています。つまり、自分の生命や運命は自分自身にかかっており、自分の選択や行動によって形成されるという考え方です。

天にあらず: 一方で、「天にあらず」という部分は、運命や宿命が神や自然の力に完全に支配されているわけではないことを示しています。人は自己決定の余地を持っており、自分の努力や行動によって生命や運命をコントロールできるという信念を表しています。

この言葉は、自己決定能力や自己責任を重視し、人生の選択や行動に対して積極的な姿勢を奨励するために使われます。また、個人の努力や意志が重要であるという考え方を表現しています。

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