養生訓57

「およそ人の楽しむべき事三あり。一には身に逆(ぎゃく)を行ひ、ひが事なくして善を楽しむにあり。二には身に病なくして、快(こころよ)く楽むにあり。三には命ながくして、久しくたのしむにあり。
富貴(ふうき)にしても此三の楽なければ、まことの楽なし。
故に富貴は(この)此三楽の内にあらず。もし心に善を楽まず、又、養生の道をしらずして、身に病多く、其(その)はては短命なる人は、此、三楽を得(え)ず。
人となりて此、三楽を得(う)る計(けい)なくんばあるべからず。
此、三楽なくんば、いかなる大富貴(だいふうき)を、きはむとも、益なかるべし。」

意訳

人生の楽しみは、自己実現の喜びと健康で長生きすることです。
どんなに経済的に恵まれていても心と健康が万全でなければ空しいものです。

通解

人の楽しむべきことは大きく三つあります。一つ目は、自ら逆の行動を取らずに善を楽しむことです。つまり、他人や社会に対して悪いことをしないで、善い行いを心掛けることで幸せを得ることができます。二つ目は、身に病を抱えずに心地よく楽しむことです。健康であり、病気が少ないことによって楽しい人生を送ることができます。三つ目は、長寿であり、長く楽しむことです。長い間喜びや楽しみを味わうことで、本当の幸せを得ることができます。

富貴にしても、これら三つの楽しみがなければ、本当の幸福は得られません。富貴だけでは満たされないのです。心に善を楽しむ心がなく、養生の道を知らずに健康でなければ、富貴な地位でも病気が多い人生を送り、長寿を得ることが難しいでしょう。これらの三つの楽しみを得るためには、人としての品性や行動、健康を大切にし、養生の術を身につける必要があります。

この三つの楽しみがない限り、どれだけ大きな富や名声を手に入れても、本当の幸福は得られないでしょう。ですから、これらの楽しみを得るためには欠かせないことです。

気づき

大病を経験した方は、健康の大切さを身をもって実感されているそうです。
どんなに財産があっても、毎日が病に苛まれていては決して幸せではないでしょう。

中国のことわざに「黄梁一炊」Huáng liáng yī chuī (こうりょう いっすい)とも
あります。

お金や財産も大切でしょうが、長そうで短い人生を健康で長生きした方が幸せかも知れませんね。

※「黄梁一炊」人生の栄枯盛衰の、はかなさのたとえ。

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