養生訓164(巻第三 飲食 上)

脾胃(ひい)虚(きょ)して生菜(なまさい)をいむ人は、乾菜(ほしな)を煮(に)食(くら)ふべし。冬月(とうげつ)蘿蔔(らふく)をうすく切りて生ながら日に乾(ほ)す。蓮根(れんこん)、牛蒡(ごぼう)、薯蕷(とろろ)、うどの根、いづれもうすく切りてほす。椎蕈(しいたけ)、松露(しょうろ)、石茸(いわたけ)も、ほしたるがよし。松蕈(まつたけ)塩漬(しおずけ)よし。壷廬(ひさご)切(り)て塩に一夜つけ、おしをかけ置(おき)てほしたるがよし。瓠畜(こちく)もよし。白芋(いらいも)の茎(くき)、熱湯(ねっとう)をかけ日にほす。是(これ)皆(みな)虚人(きょじん)の食(しょく)するに宜(よ)し。枸杞(くこ)、五加(うこぎ)、ひゆ 、菊、蘿摩(らも)、鼓子花(ひるがお)葉(は)など、わか葉をむし、煮(に)て、ほしたるをあつ物とし、味噌にて、あへ物とす。菊花(きくか)は生(なま)にて、ほす。皆(みな)虚人(きょじん)に宜(よ)し。老葉(おいば)は、こはし。海菜(うみな)は冷性(れいせい)也。老人・虚人(きょじん)に宜(よろ)しからず。昆布多く食(くら)へば気をふさぐ。

意訳

内臓が弱くて生の野菜を控えている人は、干した野菜を煮て食べても良いです。例えば、大根を薄く切って天日干しするとか、ゴボウや山芋、ウドの根なども同じようにしても良いです。松茸などの、きのこ類も良いです。

通解

脾胃が虚弱な人は、生菜を摂る場合、乾燥させた野菜を煮て食べるべきです。冬の季節には大根を薄く切って生のまま干し、蓮根、牛蒡、薯蕷、ウドの根なども同様に薄く切って干すことが良いです。椎茸や松茸、石茸も乾燥させて使用することが良いでしょう。松茸は塩漬けにするのも良い方法です。壷廬を切って塩に一晩漬け、しっかり水気を絞って干すのも良いです。瓠畜もおすすめです。白芋の茎も、熱湯をかけてから干すことが良いです。これらの食材は虚弱な体質の人に適しています。

また、枸杞(くこ)、五加(うこぎ)、ひゆ、菊、蘿摩(かがみ)、鼓子花(ひるがお)などのわか葉をむいて、煮て乾燥させたものをアツ物とし、味噌で調味したものは良いです。菊花は生のまま干すことが適しています。これらの食材も虚弱な人に適しています。老葉は熱くして食べるべきです。海菜は冷性の性質を持っており、老人や虚弱な人には適していません。昆布を多く摂ると体内の気が滞ることがあります。

気づき
枸杞(くこ)の実は、私が中国に滞在していた時に食べていました。なんでも、かの楊貴妃も大好物だったとか。薬膳や火鍋によく浮いていますね。

壷廬とは
壷廬(ひさご)とは、ヒョウタンの別称。ウリ科のつる性一年草、園芸植物。

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