養生訓176(巻第三 飲食 上)
およそ人の食後に俄(にわか)にわづらひて死ぬるは、多くは飲食(いんしょく)の過(すぎ)て、飽満(ほうまん)し、気をふさげばなり。初めまづ、生姜(しょうが)に塩を少し加えてせんじ、多く飲まして多く吐(はか)しむべし。其後(そののち)食滞(しょくとどこおり)を消し、気をめぐらす薬を与ふべし。卒中風(そつちゅうふう)として、蘇合円(そごうえん)・延齢丹(えんれいたん)など与ふべからず。あしゝ。又少にても食物を早く与ふべからず。殊(ことに)ねばき米湯など、与ふべからず。気弥(いよいよ)塞(ふさが)りて死す。一両日は食をあたへずしてよし。此病は食傷(しょくしょう)なり。世人(よびと)多くはあやまりて卒中風(そつちゅうふう)とす。その治法(じほう)応(おう)ぜず。
意訳
高齢者は、飲食が過ぎれば気を塞ぎ、時として急死の原因にもなります。その時は、吐かせるか、気の循環を良くする薬を飲んだら良いです。
通解
おおよそ、人が食後に突然に不調を感じて死亡するのは、多くの場合、飲食が過度であり、胃が満ち、気が詰まっていることが原因です。最初に、生姜に少量の塩を加えて煎じ、たくさんの量を飲んで多く吐かせることが良いです。その後、食物の消化を助け、気をめぐらすための薬を与えるべきです。卒中風(中風)の状態である場合、蘇合円や延齢丹などの薬を使用してはいけません。これに注意してください。また、食事を少量でも急に与えないでください。特に白米の湯などは与えてはいけません。気がますます詰まってしまい、死に至ることがあります。一日から二日は食べ物を摂らないでおくことが良いです。この病気は食べ物によるもので、世間では多くが誤って卒中風と考えがちですが、その治療の効果はありません。
気づき
高齢になれば、少食で多種類ものを食べた方がよいのかも知れませんね。