養生訓181(巻第三 飲食 上)
朝夕、飯(めし)を食(しょく)するごとに、初(はじめ)一椀(いちわん)は羹(あつもの)ばかり食して、飣(てい)を食せざれば、飯の正味(しょうみ)をよく知りて、飯の味よし。後に五味(ごみ)の飣(てい)を食して、気を養なふべし。初より飣(てい)をまじえて食へば、飯の正味を失なふ。後(のち)に飣(てい)を食へば、飣(てい)多からずしてたりやすし。是れ、身を養ふによろしくて、又、貧(ひん)に処(す)るによろし。魚鳥・蔬菜(そさい)の飣を多く食はずして、飯の味のよき事を知るべし。菜肉(さいにく)多くくらへば、飯のよき味はしらず。貧民(ひんみん)は飣肉ともしくして、飯(めし)と羹(あつもの)ばかり食(くら)ふ故に、飯の味よく食滞(くらしょくとどこおり)の害なし。
意訳
食事は、最初にお吸い物を飲み、少し、ご飯を食べると本来のお米の美味しさうを味合うことが出来るでしょう。その後、副食を食べると良いです。
通解
朝夕の食事の際、最初の一椀は主に羹(あつもの)を食べ、飯を少し食べてから、飯の本来の味をよく感じるべきです。その後に五味を含んだ飯を食べて、体の気を養うことが良いでしょう。最初から飯を羹とまじえて食べると、飯の本来の味が分からなくなります。後から飯を食べると、飯の割合が多すぎず、食べやすくなります。これは体を養う上で良い方法であり、また、貧しい状況でも利用できます。魚や鳥、野菜の飯を多く食べず、飯の味を大切にしましょう。野菜や肉を多く食べると、飯の本来の味が分からなくなることがあります。貧しい人々は飯と羹を中心に食べているため、飯の味を感じることができ、また、食滞の問題も少ないです。
気づき
過食を避けるためにも、水分量の多い物から食べた方が良いのかも知れませんね。
羹とは
「羹(あつもの)」は、主に濃い汁物やシチューのような、とろみのある料理を指します。この言葉は、具材や出汁を主成分とした濃いスープ状の料理を指すことが一般的です。羹にはさまざまな種類があり、具体的な材料や調理法は料理の種類によって異なります。
例えば、「魚のあんかけ羹」や「野菜のあんかけ羹」などがあり、これらは具材を使った濃い出汁でとろみをつけた料理です。また、「かき玉汁(かきたまじる)」は卵をとじてとろみを出した汁物で、これも一種の羹と言えます。