養生訓173(巻第三 飲食 上)
肉は一臠(いちれん)を食し、菓(か)は一顆(いっか)を食しても、味をしる事は肉十臠(にくじゅうれん)を食(しょく)し、菓百顆(かひゃくか)を食したると同じ。くひて胃をやぶらんより、少く、くひて其味(そのあじ)をしり、身に害なきが、まされり。水は清(きょ)く甘きを好むべし。清からざると味あしきとは、用(もち)ゆべからず。郷土(きょうど)の水の味によって、人の性(さが)かはる理(ことわり)なれば、水は尤(もっとも)ゑ(え)らぶべし。又、悪水(あくすい)の、もり入たる水、のむべからず。薬と茶を煎(せん)ずる水、尤(もっとも)よきをゑ(え)らぶべし。
意訳
肉の味は一口食べても多く食べても同じです。それは、果物なども同じです。少し食べることによって本来の味が分かる場合もあります。これが、胃腸に一番いいです。水も大切です。その地方にあった水を選びましょう。特に、お茶と薬を飲むときは、よい水にしましょう。
通解
肉を一切れ食べ、果物を一粒食べても、その味を知ることは肉を十切れ食べ、果物を百粒食べたと同じです。過度に食べて胃を傷めるよりも、少量を食べてその味を楽しむことが良いですし、身体にも害がありません。水は清らかで甘いものを好むべきです。水が濁っていると味が悪いため、使用する際は注意が必要です。地域ごとの水の味わいが人々の好みに影響を与えるため、その地域の水を選ぶことが良いです。また、汚れた水や溜まった水は避けるべきです。薬や茶を淹れるのに使う水は特に良質なものを選ぶべきです。
気づき
菓子や果物は、美味しいのでついつい、過食しますが、味わって食べると少しでも、本来の味覚が味わえるのかも知れませんね。