養生訓36

「常に元気をへらす事をおしみて、言語をすくなくし、七情(しちじょう)を、よきほどにし、七情の内にて、取(とり)わき、いかり、かなしみ、うれひ思ひを、すくなくすべし。
慾をおさえ、心を平(たいらか)にし、気を和(やわらか)にして、あらくせず、しづかにして、さはが、しからず、心は、つねに、和楽(わらく) なるべし。
憂(うれ)ひ、苦むべからず。是、皆、内慾をこらえて元気を養ふ道也。
又、風寒暑湿(ふうかんしょしつ)の外邪をふせぎて、やぶられず。
此(この)内外の数(かず)の慎(つつしみ) は、養生の大なる条目(じょうもく)なり。是をよく慎しみ守るべし。」

意訳

まず、ストレスを軽減することです。
ストレスが少なくなれば、自然に元気が出てきます。
日頃から、怒ったり、悲しんだり、憂いたりする原因を少なくすることです。
そうすれば、免疫力もつき、自然環境にも順応することができ、病気に強くなります。

通解

「常に元気を減らすことを避け、言葉を控えめにし、七つの感情を適度に保ち、その感情の中で、取りわけや怒り、悲しみ、喜び、思いを少なくすべきです。
欲望を抑え、心を平穏にし、気を柔らかくして、荒くならず、静かにして、騒がず、心は常に安らかであるべきです。
悲しみや苦しむことは避けるべきです。これは皆、内なる欲望を抑えて元気を養う道です。
また、風や寒さ、暑さ、湿気といった外からの邪気を防ぎ、侵されないようにします。
この内外のバランスを守ることは、健康を保つ上で非常に重要な要件です。これをよく注意し守るべきです。」

「七情(しちじょう)」とは

「七情(しちじょう)」は、中国の伝統的な心理学や感情論における概念で、人間の感情を七つの基本的な感情に分類する考え方です。これらの基本的な感情は、感情の種類や表現を理解し、制御しようとする際に役立つと考えられています。七情は、中国哲学や文化、医学などの様々な分野で影響を与えています。

以下は、一般的な七情のリストです:

喜(き):喜びや幸福を表す感情です。何か嬉しいことや楽しい出来事があったときに感じる感情です。

怒(いか):怒りや腹立たしさを表す感情です。不満や不快な状況に対する感情です。

哀(あい):哀しみや悲しみを表す感情です。喪失や損失に対する感情です。

楽(らく):楽しみや安心を表す感情です。緩和やリリースの感情とされています。

愛(あい):愛情や情熱を表す感情です。愛する人や物事に対する感情です。

憂(ゆう):心配や悩みを表す感情です。未来の不安や重要な問題に対する感情です。

恐(きょう):恐れや不安を表す感情です。危険や脅威に対する感情です。

これらの七情は、人間の感情体験を包括的に捉えるためのモデルとして使用され、特に古代中国の思想や医学、芸術、文学などの分野で重要視されています。また、これらの感情が心身の健康に影響を与えるという考え方も存在し、バランスを取るための指針とされてきました。

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