養生訓185(巻第四 飲食下)
朝夕(あさゆう)一飣(さい)を用(もち)ゆべし。其(その)上に醤(ひしお)か肉醢(ししびしお)か或(あるいは)つけものか一品を加(くわ)ふるもよし。あつものは、富(と)める人も常に只(ただ)一なるべし。客に饗(きょう)するに二用(もちふ)るは、本汁(ほんじる)、もし心に叶(かな)はずば、二の汁を用(もちい)させん為也。常(つね)には無用の物也。
唐の高侍郎(たかじろう)と云し人、兄弟あつものと肉を二にせず、朝夕一品(いっぴん)のみ用(もち)ゆ。晩食(ばんしょく)には只(ただ)蔔匏(ふくほう)をくらふ。大根と夕がほとを云。范忠宣(はんちゅうせん)と云し、富貴(ふうき)の人、平生(へいせい)肉をかさねず。其(その)倹約養生二(ふたつ)ながら則(のり)とすべし。
意訳
朝夕の食事は、副食は、一品でそれに、味噌や塩辛、漬物を添えるぐらいでも良いでしょう。お吸い物は、一種類で良いでしょう。昔の中国の高官でも、過食はしませんでした。吝嗇というだけでなく、養生の為でした。
通解
朝と夕、一つの食事を摂るべきです。その上に醤や肉醢、または漬け物など一品を追加することも良いです。熱い料理は、豊かな人でも常にただ一つにとどめるべきです。客をもてなす際、料理を2つ用意するのは、主汁が心に合わない場合に、別の汁を提供するためです。通常は不要なことです。
唐代の高侍郎という人物は、兄弟あつものと肉を2つに分けず、朝夕一品のみを用意することを実践しました。晩の食事には大根と夕がほとを食べるだけで済ませました。范忠宣という人は、富貴な人でも常に肉をたくさん食べず、倹約と健康の考えを守るべきだと述べました。
気づき
あつものとは、肉・野菜を入れた熱い吸い物で諺に「羹(あつもの)に懲(こ)りて膾(なます)を吹く」がありますね。熱い吸い物で火傷した人がそれにこりて、膾(なます)や韲物(あえもの)のような冷たい料理も吹いてさますという、一度の失敗にこりて、必要以上の用心をするたとえとして使われているそうですよ。
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蔔匏とは
「蔔匏(ふくほう)」は、中国の伝統的な野菜であり、大根(蔔)とヒョウタン(匏)を指します。大根とヒョウタンは別々に育てられ、成熟した後にくり抜いたヒョウタンの中に大根を詰めて保存することが一般的です。
この独特な保存方法により、大根はヒョウタンの中で保護され、長い間新鮮なままで保存できます。また、ヒョウタンの中で大根が発酵することによって、風味が増し、独自の味わいが生まれます。この伝統的な保存法は、古くから食材の保存と持続可能な食糧確保の手段として使用されてきました。
蔔匏は、中国の伝統的な食文化や調理法の一部として重要な存在です。このような伝統的な食材や保存法は地域によって異なることがあり、特定の料理や祝祭日に関連して用いられることもあります。