養生訓152(巻第三 飲食 上)
聖人(せいにん)其(その)醤(ひしお)を得ざれば、くひ給わず。是(これ)養生の道也。醤(ひしお)とは、ひしほにあらず、其(その)物(もの)にくは、ふべきあはせ物なり。今、こゝにていはゞ、塩、酒、醤油、酢、蓼(たで)、生姜(しょうが)、わさび、胡椒(こしょう)、芥子(かいし)、山椒など、各(おのおの)其(その)食物に宜(よろ)しき加(くだ)へ物あり。これを、くはふるは其(その)毒を制する也(なり)。只(ただ)其味(そのあじ)のそなはりて、よからん事をこのむにあらず。
意訳
それぞれの食べ物に合う、塩、酒、醤油、酢、蓼(たで)、生姜、わさび、胡椒、芥子、山椒などは、味が良くなるだけでなく、毒消しの効果もあります。
通解
聖人はその醤を得なければ、食を楽しむことができない。これが養生の道である。ここでいう「醤」とは、ひしほのことではなく、その食材に添える調味料やソースのことを指す。現代では、塩、酒、醤油、酢、蓼、生姜、わさび、胡椒、芥子、山椒など、それぞれの食材に適した調味料があります。これらは適切に加えることで、その食材の特性や味を引き立てるものです。ただし、味を楽しむためだけでなく、健康を保つためにも使用するべきです。
気づき
以前、生姜やワサビは殺菌効果があると聞いたことがありました。食用の植物には人間に有意義な効能があるのでしょうね。
「蓼(たで)」とは
「蓼(たで)」は、日本語でタデ科に属する植物の総称です。代表的なものに「ノハラタデ」や「ツツジバナタデ」などがあります。これらの植物は一般に湿地や水辺などで見られ、多くは草丈が低く、葉が広い形状をしています。
また、「蓼」は日本の伝統的な季語で、秋の季節を象徴する言葉としても使われます。蓼の花は淡いピンク色をしており、秋の風情を感じさせることから、和歌や俳句などの文学作品にもよく登場します。
また、蓼と言えば、「蓼食う虫も好き好き」の言葉があります。意味は、苦くて辛い葉である蓼は、ほとんどの虫が好まずに食べません。
「芥子」とは、
「芥子」は、日本語でからし科に属する植物の一群を指します。最も一般的に知られているのは、からしの種子から作られる調味料のことです。からしは辛味を持ち、さまざまな料理で使われています。からしの主成分であるイソチオシアネートが、辛味の原因となっています。からしの辛味は生の種子から摂取できるほか、からしのペーストやからしの粉末が調味料として一般的に使用されています。からしは、和食や欧米料理など、世界中で様々な料理に組み合わせて使われています。
山椒とは
山椒(さんしょう)」は、主に日本や中国の料理において使用される香辛料で、山椒科に属する植物の一部を指します。代表的なものに「日本山椒」や「中国山椒」などがあります。これらの植物は、果実や葉を調味料として使用することが一般的です。
主に、山椒の葉や果実から抽出される成分には、特有の香りと辛味があります。日本山椒は、シトロネルやレモングラスに似た爽やかな香りがあり、辛味は唇にピリッと感じられます。中国山椒にも独自の風味があり、これを使った料理は特有の香りと風味で知られています。
山椒は、和食の一部としてさまざまな料理に使用されます。例えば、焼肉や冷奴、鍋物、そばなどの料理で山椒が添えられることがあります。また、山椒は日本の伝統的な漬物である「紅しょうが」や「柚子胡椒」にも使われ、風味を添えます。