養生訓135(巻第三 飲食 上)

(めし)はよく人をやしなひ、又よく人を害す。故に、飯はことに多食(たしょく)すべからず。常に食して宜(よろ)しき分量(ぶんりょう)を定むべし。飯を多くくらへば、脾胃(ひい)をやぶり、元気をふさぐ。他の食の過(すぎ)たるより、飯の過(すぎ)たるは消化しがたくして大いに害あり。客(きゃく)となりて、あるじ心を用(もち)ひて、まうけたる品味(ひんみ)を、箸(はし)を下(くだ)さゞれば、主人の盛意(せいい)を空しくするも快(こころよ)からずと思はゞ、飯を常の時より半減(はんげん)して飣(さい)の品味を少づゝ食すべし。此の如くすればさい多けれど食にやぶられず。飯を常(つね)の如く食して、又魚鳥(ぎょちょう)などの、飣(さい)数品多くくらへば必(ず)やぶらる。飯後(めしご)に又茶菓子(ちゃがし)ともち・餌(だんご)などくらひ、或(あるい)は、後段(ごだん)とて麺類(めんるい)など食すれば、飽満(ほうまん)して気をふさぎ、食にやぶらる。是(これ)常(つね)の分量に過(すぎ)れば也。茶菓子・後段(ごだん)は分外(ぶんがい)の食なり。少(すこ)し食(しょく)して可(か)也。過(すご)すべからず。もし食後に少し(すこ)食せんとおもはゞ、かねて飯を減ずべし。

意訳

上司や知人などに食事を招待された場合でも、満腹になるまで食べない方が良いでしょう。どんな時でも、自分の適量を守りましょう。この場合、副食から先に食べましょう。そうすれば、相手の誠意を害することは少なくなるでしょう。過食は、気を塞ぐ原因になります。

通解

食事は人に良い影響を与える一方で、害をもたらすこともあります。そのため、食事は特に過度に摂るべきではありません。常に適切な分量を守ることが重要です。食事を過剰に摂ると脾胃を損ない元気を減少させる可能性があります。
招かれて宴席に出席する際には、主人の心遣いを無にしないように、食事の品味を少しずつ楽しむべきです。食事の量を普段の食事よりも減らし、品味を楽しむことが大切です。これによって、食事が多くても体を損なうことはありません。また、食事後に茶菓子やもち、餌などを摂ることや、後で麺類などを食べることは、満腹感を生じ、体のバランスを崩す可能性があります。茶菓子なども少量で十分です。過度に食べ過ぎないように注意しましょう。食事後に食べるつもりであれば、事前の食事の量を減らしておくことも配慮の一つです。

気づき

仲間内や上司との会食などの時は、ついつい過食になります。特に、接待の時などには精神的ストレスも加わり、自分をコントロールすることが難しくなります。最近の私は、出来るだけそのような場所に縁しない様に心掛けています。
品味とは
「品味(ひんみ)」にはいくつかの異なる意味があります。

ここでの「品味」は、食べ物や飲み物の味わいや風味の質や特性を指します。例えば、料理や飲み物の「品味がいい」という表現は、それがおいしいと感じられる味わいや風味を指します。

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