養生訓136(巻第三 飲食 上)
食の人は、人、これをいやしむ。其(その)小(しょう)を養つて、大をわするゝ、がためなりと、孟子(もうし)の、のたまへるごとく、口腹(こうふく)の欲にひかれて道理をわすれ、只(ただ)、のみくひ、あきみちん事を、このみて、腹はり、いたみ、病となり、酒にゑ(え)ひて乱に及ぶは、むけにいやしむべし。
意訳
「小さな欲にとらわれ過ぎると、大切なものを見失う」と、孟子も言っています。飲食の欲も同じです。酒を飲み過ぎて酒乱になったり食べ過ぎて胃腸を悪くしたり、結果、長く美味しく飲んだり食べることが出来なくなります。
通解
飲食を貪る人々は、卑しい人と言われます。孟子曰く、口腹の欲望に流されて正しい判断を忘れ、ただ飲み食いを追求することは口腹の欲望によって体の調和を乱し腹が張って不快感を感じたり、痛みや病気を引き起こしたりする。また、酒に溺れて乱れることもあります。このようなことを避けるためには、欲望に流されず、自制する心が必要です。
気づき
人の価値観は、それぞれ異なり、何が小さい欲かは、難しい判断でしょう。ただ、その結果が、将来、悪い方向に行くとしたら改めた方がいいのかも知れませんね。
孟子とは
孟子は、中国の戦国時代の思想家で、儒家の重要な思想家の一人です。孟子は、孔子の弟子で、儒教の伝統を受け継ぎ、発展させました。