養生訓159
食の人は、人、これをいやしむ。其(その)小(しょう)を養つて、大をわするゝ、がためなりと、孟子(もうし)の、のたまへるごとく、口腹(こうふく)の欲にひかれて道理をわすれ、只(ただ)、のみくひ、あきみちん事を、このみて、腹はり、いたみ、病となり、酒にゑ(え)ひて乱に及ぶは、むけにいやしむべし。
意訳
「小さな欲にとらわれ過ぎると、大切なものを見失う」と、孟子も言っています。飲食の欲も同じです。酒を飲み過ぎて、酒乱になったり、食べ過ぎて、胃腸を悪くしたり、結果、長く美味しく、飲んだり、食べることが出来なくなります。
通解
飲食の人々は、身体を損なうことを避けるべきです。小さな欲望を抑えて、大切なことを守ることが重要です。口腹の欲望に流されて正しい判断を忘れ、ただ飲み食いを追求することは、口腹の欲望によって体の調和を乱し、腹が張って不快感を感じたり、痛みや病気を引き起こしたりします。また、酒に溺れて乱れることもあります。このようなことを避けるためには、欲望に流されず、身体を大切にすることが大切です。孟子の言葉のように、小さな欲望に流されて大切なことを忘れないように心掛けるべきです。
気づき
人の価値観は、それぞれ異なり、何が小さい欲かは、難しい判断でしょう。ただ、その結果が、将来、悪い方向に行くとしたら改めた方がいいのかも知れませんね。