養生訓217(巻第四 飲酒)
酒は天の美禄(びろく)なり。少のめば陽気を助け、陽気をやはらげ、食気(しょくき)をめぐらし、愁(うれい)を去り、興(こう)を発して、甚(はなはだ)人に益あり。多くのめば、又よく人を害する事、酒に過(すぎ)たる物なし。水火(すいか)の人をたすけて、又よく人に災(わざわい)あるが如し。邵尭夫(しょうぎょうふ)の詩(し)に、「美酒を飲(のん)て微酔(びすい)せしめて後(のち)」、といへるは、酒を飲の妙(みょう)を得(え)たりと、時珍(じちん)いへり。少のみ、少し酔(よ)へるは、酒の禍(わざわい)なく、酒中(しゅちゅう)の趣(おもむき)を得(え)て楽(たのしみ)多し。人の病、酒によって得(え)るもの多し。酒を多くのんで、飯をすくなく食ふ人は、命(いのち)短し。かくのごとく多くのめば、天の美禄(びろく)を以(も)って、却(かえって)て身をほろぼす也(なり)。かなしむべし。
養生訓(意訳)
お酒は、天から与えられた御褒美です。食が進みストレスを忘れさせて陽気にしてくれます。しかし、飲み過ぎれば、これ以上に害になるものはありません。天国と地獄は紙一重です。
通解
酒は天からの贈り物であり、適度に摂取すると陽気を助け、気分を落ち着かせ、消化を促進し、憂鬱を取り除き、楽しい気分を生むことがあります。特に程よく摂ることで、人に良い影響を及ぼすことがあります。しかし、過度に摂取すると、人を害することがあります。酒は過剰摂取すると有害なものはありません。水や火と同様に、酒も人を助けることがあれば、逆に災いをもたらすことがあります。詩人の邵尭夫(しょうぎょうふ)は、「美酒を飲んで微酔になり、その後を楽しむ」と詠んでおり、酒の摂取が楽しみをもたらすことを表現しています。適度に少量の酒を飲むことで、酒の悪影響を回避しつつ、楽しむことができます。実際、人々の病気は、酒によって改善されることも多いです。ただし、酒を過度に摂取して、食事を抑える人は寿命が短くなる傾向があります。過度の飲酒は、天からの贈り物である酒の利益を逆に自らの健康を害するものに変えてしまうことにつながります。このことは悲しむべきことです。
気づき
お酒の功罪については、いろいろな意見がありますね。自分自身の適量が一番ですかね。