養生訓227(巻第四 飲茶 附 煙草)
茶、上代(じょうだい)はなし。中世(ちゅうせい)もろこしよりわたる。其(その)後(のち)、玩賞(がんしょう)して日用(にちよう)かくべからざる物とす。性冷(せいれい)にして気を下し、眠をさます。陳臓器(ちいぞうき)は、久しくのめば痩(やせ)てあぶらを、もらすといへり。母けい(ぼけい)、東坡(とうば)、李時珍(りじちん)など、その性(さが)よからざる事をそしれり。然(しかれ)ども今の世、朝より夕まで、日々茶を多くのむ人多し。のみ習(なら)へばやぶれなきにや。冷物(れいぶつ)なれば、一時に多くのむべからず。抹茶(まっちゃ)は用(もちい)る時にのぞんでは、炊(い)らず煮(に)ず、故につよし。煎茶(せんちゃ)は、用(もちい)る時、炒(いり)て煮(に)る故、やはらかなり。故につねには、煎茶(せんちゃ)を服(ふく)すべし。飯後(めしご)に熱茶(ねっちゃ)少し、のみて食(しょく)を消し、渇(かつ)をやむべし。塩を入てのむべからず。腎(じん)をやぶる。空腹(くうふく)に茶を飲べからず。脾胃(いひ)を損(そん)す。濃茶(こちゃ)は多く飲むべからず。発生(はつせい)の気を損(そん)す。唐茶(とうちゃ)は性(せい)つよし。製(せい)する時、煮ざればなり。虚人(きょじん)病人(びょうにん)は、当年の新茶、のむべからず。眼病(がんびょう)、上気(じょうき)、下血(げけつ)、泄瀉(せつしゃ)などの患(うれい)あり。正月よりのむべし。人により、当年(とうねん)九十月よりのむも害なし。新茶の毒にあたらば、香蘇散(かそさん)、不換金(ふかんきん)、正気散(しょうきさん)、症(しょう)によりて用(もちい)ゆ。或(あるいは)白梅(はくばい)、甘草(さんぞう)、砂糖、黒豆(くろまめ)、生姜(しょうが)など用(もち)ゆべし。
養生訓(意訳)
お茶の飲み方として、日常においては、煎茶を飲むと良いでしょう。また、食事の後に熱い茶を少し飲んで食べ物を消化させ、渇(かわ)きを癒(いや)すのも良いでしょう。
通解
茶の歴史は古く、上代では言及されていません。中世を通じても、茶は日常生活においてはあまり重要視されておらず、主に玩賞の対象とされていました。しかし、後に茶の効能が認識されるようになり、健康や気分の向上に役立つとされました。古代の医学書には、長期間にわたって茶を摂ることで体が痩せて脂肪が減少するという記述があります。ただし、東坡など一部は、茶の性質に懐疑的であったようです。
しかしながら、現代社会では朝から晩まで多くの人が日常的に茶を摂取しています。摂取の仕方には注意が必要で、冷たい飲み物として急激に摂取することは避けるべきです。抹茶は使う際にその都度混ぜて飲むため、味や風味が保たれます。煎茶は事前に炒ってから煮出すため、やわらかな風味があります。特に食事後には熱茶を少し摂取すると食事の消化を助け、渇きを癒すことができます。ただし、茶に塩を加えて飲むことは避けるべきで、腎臓を傷つける可能性があります。空腹時に茶を摂取することも避け、胃腸を損傷しないよう注意が必要です。
濃い茶を多く摂ることも避けるべきです。これは発生の気を損なう可能性があります。唐茶は性質が強いため、注意が必要であり、製造過程で煮ることが推奨されています。虚弱な人や病気の人は、当年の新茶を避けるべきです。新茶は眼病や上気、下血、下痢などの症状を引き起こす可能性があります。正月からの摂取が適切ですが、個人によっては当年の9月から摂取しても害は少ないでしょう。新茶の有毒な影響を受けた場合、香蘇散や不換金、正気散などの薬を用いるか、白梅や甘草、砂糖、黒豆、生姜を摂取することが推奨されます。
気づき
現在、お茶については、カフェインが含まれているので眠気を覚ます効果があることは世に知れていますね。私は、濃いお茶が大好きですが、多飲は控えた方が良いのかも知れませんね。また、煎茶に含まれるカテキンは抗菌作用があり、風邪の予防や口臭改善、虫歯予防の効果があると聞いたことがありますね。