養生訓222(巻第四 飲酒)
酒を人にすヽむるに、すぐれて多く飲む人も、よき程(ほど)の節(せつ)をすぐせば、くるしむ。若(もし)、その人の酒量(しゅりょう)をしらずんば、すこし、しひて飲しむべし。其人(そのひと)辞(じ)してのまずんば、その人にまかせて、みだりに、しひずして早くやむべし。量(りょう)にみたず、すくなくて無興(ぶきょう)なるは害なし。すぎては必ず人に害あり。客に美饌(びせん)を饗(きょう)しても、みだりに酒をしひて苦(くるし)ましむるは情(なさけ)なし。大(おおいに)に酔(よい)しむべからず。客は、主人(しゅじん)しひずとも、つねよりは少多くのんで酔(よう)べし。主人は酒を妄(みだり)にしひず。客は、酒を辞(じ)せず。よき程にのみ酔(よい)て、よろこびを合せて楽しめるこそ、是(これ)宣(よろ)しかるべけれ。
養生訓(意訳)
酒席で、お酒を勧める場合、むやみに勧めると相手が苦しむ時があります。相手の適量も考慮しましょう。その思いが伝われば、酒量が少なくても不機嫌にはならないでしょう。逆に、無理に勧めることで「配慮の無さ」が見透かされます。
通解
他人に酒を勧める際、酒を得意とする人であっても、適切な量をすぐに飲むことが苦痛になることがあります。もしその人の酒の量を知らない場合は、少しだけ注いでみて飲んでもらいましょう。その人が断るならば、そのままにしてみだりに勧めないようにし、早めにやめるよう促しましょう。量は無理せず少なくても楽しくなることはありますが、過度に飲むと必ず人に害があることになります。客人に豪華な料理を提供しても、勝手に酒を注いで苦しませることは配慮が足りません。過度に酔うことは避けるべきです。客は主人が注いでも、通常よりは少なく飲んで程よく楽しむべきです。主人は無謀に酒を注がず、客は断らずに飲むべきです。適切な量で楽しんで、喜びを共有することが、上手な飲酒の方法です。
気づき
最近は、お酒を強引に進める人も少なくなりましたね。何事もほどほどが一番かも知れませんね。