養生訓87

「気は、一身体(いちしんたい)の内にあまねく行わたるべし。
むねの中(なか) 一所(ひとところ)に、あつむべからず。
いかり、かなしみ、うれひ、思ひ、あれば、胸中(きょうちゅう)一所ひとところ)に気とどこほりてあつまる。
七情(ななじょう)の過(すぎ)て滞(とどこう)るは病の生(しょうず)る基(もと)なり。」

意訳

心の中に怒り、悲しみ、うれい、苦悩があれば、気分が滞り病気の原因になるでしょう。

通解

気は一つの身体の中で全体に行き渡るべきです。胸の中の一箇所にだけ集まるべきではありません。怒りや悲しみ、喜び、思いなどがあると、胸中の一箇所に気が滞ることがあります。七つの感情の過剰で滞ることが、病気の発生の基となるのです。

気づき

江戸時代の初期において、怒りや悲しみ、うれいがあれば、身体に良くないことは分かっていても、病気の原因にまで言及されていることに、少なからず驚かされました。ストレスが、身体に影響することは、今も昔も変わらない事ですかね。

「七情」とは

「七情」(Seven Emotions)は、中国の古代哲学と医学において用いられる概念で、人間の感情を七つの主要なカテゴリーに分類する方法を指します。これらの七つの感情は、個人の感情体験や心理状態を記述するために使用され、中国の伝統的な文化や思想において重要な役割を果たしています。

以下は七情の一般的な分類です:

喜(Joy): 喜びや幸福な感情を指します。喜びは良い出来事や幸運な出来事に対する感情であり、心の満足感を伴います。

怒(Anger): 怒りやいらだちを指します。怒りは不満や不快感に対する感情であり、しばしば他人や状況に対する不満や怒りを表すことがあります。

哀(Grief): 哀しみや悲しみを指します。哀は悲しい出来事や喪失に対する感情であり、悲しい出来事に対処する際の感情的な反応を表します。

乐(Happiness): 楽しみや喜びを指します。乐は喜びや楽しい瞬間に対する感情であり、生活の楽しみや喜びを表現します。

愁(Worry): 心配や不安を指します。愁は未来の不確実性や問題に対する感情であり、心配や不安を表現します。

惊(Fear): 恐れや驚きを指します。惊は危険や脅威に対する感情であり、恐れや驚きを表現します。

思(Thought): 思考や思索を指します。思は知的な思考や分析に対する感情であり、考えるプロセスを表現します。

これらの七情は、中国の伝統医学や儒教、道教、仏教、文学、漢詩、絵画などの多くの文化や学問分野で使用されており、人間の感情や心理的な健康についての理解を深めるために役立っています。また、これらの感情が心身の健康に影響を与えるという考えも含まれており、伝統的な中国医学では、感情と健康の関連性を考慮に入れて治療が行われることがあります。

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