養生訓85

「是(これ)養生の要(よう)也。養生の道におゐ(い) ては、けなげなるはあしく、おそれつつしむ事、つねに小(ちい)さき一橋(ひとつばし)を、わたるが如くなるべし。
是畏るなり。わかき時は、血気さかんにして、つよきにまかせて病をおそれず、慾をほしゐままにする故に、病おこりやすし。
すべて病は故(ゆえ)なくて、むなしくはおこらず、必(かならず)慎(つつし)まざるよりおこる。
殊(こと)に老年(ろうねん)は身よはし、尤(つつしまざる)おそるべし。おそれざれば老若(ろうにゃく)ともに多病にして、天年(てんねん )をたもちがたし。」

意訳

養生の道は、小さい橋を渡るように用心深い行動が必要です。すべての病気には原因があります。
特に、高齢者は、身体が弱いので注意が必要です。老いも、若きも、慎んで畏れて生活すれば、天寿を全うすることが出来ます。

通解

これが養生の要点です。養生の方法においては、精一杯努力することが重要であり、恐れを抱きつつ慎重に行動することが、小さな橋を渡るように常に行われるべきです。この慎重さこそが「畏る」ことになります。若い時は、血気が盛んで体が強いため、病気を恐れず、欲望を自由に満たすことで病気になりやすくなります。すべての病気は原因があっておこるものであり、慎みないことが原因で起こるのです。

特に老年の時は、身体が弱り、特に慎重さが求められます。恐れを持たないと、老若を問わず多くの病気にかかり、天命を全うすることが難しくなります。

気づき

ミスを起こしやすい時は、初めよりも、少し慣れてきた時に起こりやすいと、若い頃よく聞いたことがありました。
そして、自分自身に、傲慢の種が芽生え始めた時にも同じような目に会いました。

何事も、初心を維持することが、一番難しい事かも知れませんね。

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