養生訓59(巻第一総論上)

「萬(よろず)の事、一時(いちじ)心に快(こころよ)き事(こと)は、必ず、後(かならずのち)に殃(わざわい)となる。
酒食(しゅしょく)をほしゐまゝにすれば快けれど、やがて病となるの類なり。
はじめにこらゆれば必ず、後(のち)のよろこびとなる。
灸治(きゅうじ)をしてあつきをこらゆれば、後(のち)に病なきが如し。
杜牧(とぼく)が詩(し)に、忍(しのび)過ぎて事(こと)喜ぶに堪(こた)えたりと、いへるは、欲をこらえすまして、後(のち)は、よろこびとなる也。」

意訳

すべての事において、一時の快楽は、のちの災いの種になります。美食を、思いのまま食べれば過ぎれば病気のもとになります。養生を習慣化すると苦痛にならず健康になって喜びに変わります。お灸と同じです。

通解

あらゆることにおいて、一時の快楽に心を奪われると、必ず後で災いが訪れます。例えば、飲食や欲望を追求することで一時的に快感を得るかもしれませんが、その後に病気として現れることがあります。同様に、初めは喜びを感じるかもしれませんが、その後に苦労が待っていることもあります。

たとえば灸治療をして一時的な痛みや不快感を我慢することで、後に健康を保つことができるという考え方もあります。また、詩人の杜牧が詩で表現したように忍耐して一時の快楽を我慢し後で大きな喜びを感じることができる場合もあります。このように、欲望を抑えて長期的な視野で物事を考えることが大切です。

気づき

「おいしい料理が目の前に出されれば、誰しも我慢できるものではない。」と思うのは私だけでしょうか?ですから、私の場合は、そのような場所や縁する所には行かないようにしています。自炊は経済的にも栄養面でも比較的に管理できそうですね。

杜牧とは

杜牧は、中国唐代の詩人で、生年は紀元前803年頃、没年は852年頃とされています。杜牧は唐代中国の文学史において重要な詩人の一人で、彼の豊かな文学才能と多産な作品で知られています。彼の詩作品は多岐にわたり、田園詩、山水詩、歴史詩、抒情詩などさまざまなジャンルが含まれています。杜牧の詩は感情豊かで人生への洞察に溢れており、唐代社会の様子や人々の生活を反映しています。

杜牧の代表作には、「秋夕」、「秋夕二首」、「秋夜将晓出篱门迎凉有感二首」などがあります。彼の詩には自然への愛情や生活への感悟が表れ、唐代文学の代表的な作品の一つとされています。彼の詩は後代の文学に深い影響を与え、後の世代に広く称賛されています。

杜牧は中国古典文学史の中でも重要な人物で、彼の詩は広く伝承され、後の詩人たちに多大な影響を与えました。彼の詩のスタイルは清新で優雅であり、芸術的な価値が高いとされています。