養生訓56(巻第一総論上)

「陰陽(いんよう)の気天(きてん)にあつて、流行(りゅうこう)して滞(とどこう)らざれば、四時(しじ)よく行はれ、百物(ひゃくぶつ)よく生(うま)る。
偏(へん)にして滞(とどこう)れば、流行の道ふさがり、冬あたたかに夏さむく、大風大雨(たいふうたいう)の変ありて、凶害(きょうがい)をなせり。
人身にあっても亦(また)しかり。気血(きけつ)よく流行して滞らざれば、気つよくして病なし。
気血流行せざれば、病となる。」

意訳

自然環境も、一つの調和とリズムがあります。その調和が乱れると冬が暖かくなったり、夏に寒くなったりします。また、台風や大雨が多くなって不作になったりします。
人も同じようなことが云えます。調和とリズムが整えば、病気になる可能性が低くなります。

通解

陰陽の気は天に存在し、流行して滞ることなく動くと、四季が適切に進行し、百物が豊かに生育します。一方で、偏った気の流れが滞ると、季節の変化が乱れ、冬に暖かいこともあり夏に寒くなることもあり、大風や大雨などの異常気象が発生し、災害を引き起こすことがあります。人間の身においても同じです。体内の気と血が適切に流れて滞ることなく動けば、元気で病気になることはありません。しかし、気と血の流れが滞ると、病気となってしまいます。