養生訓382(巻第八 養老)
老人は、大風雨(おおあらし)、大寒暑(だいかんしょ)、大陰霧(だいいんむ)の時に、外に出(いず)べからず。かゝる時は、内に居て、外邪をさけて静養すべし。老ては、脾胃(ひい)の気衰(きおとろ)へ、よはくなる。食すくなきに宜(うべ)し。多食するは危し。老人の頓死するは、十に九は皆、食傷(しょくしょう)なり。わかくして、脾胃つよき時にならひて、食過れば、消化しがたく、元気ふさがり、病おこりて死す。つゝしみて、食を過すべからず。ねばき飯(めし)、こはき飯、もち、だんご、麪(めん)類、糯(もち)の飯、獣(けもの)の肉(にく)、凡(およそ)消化しがたき物を多く、くらふべからず。
養生訓(意訳)
老後の生活は、若い時に比べ、運動能力や反射神経が衰えています。ですから、大雨など天候が悪い時は、外出は控え、家で静養した方が良いでしょう。そして、胃腸も衰えています。消化の良い物を食べましょう。
通解
老人は、大風雨や大寒暑、濃い霧の時に外に出るべきではありません。そのような時は、室内にとどまり、外からの邪気を避けて静養するべきです。年をとると脾胃の気が衰え、消化機能が低下します。食事を控えることが良いでしょう。過剰な食事は危険です。老人の急死のうち、9割は食べ過ぎによるものです。若い時には脾胃が強く、食べ過ぎても消化できますが、年をとると消化が困難になり、元気を失い、病気を引き起こして死に至ることがあります。だからこそ、食事を過度に摂取することは避けるべきです。粘りのあるご飯やもち米、団子、麺類、もちの飯、獣肉など、消化が難しい食べ物を多く摂るべきではありません。