養生訓370(巻第七 用薬)
上中部(じょうちゅうぶ)の丸薬(がんやく)は早く消化するをよしとす。故に、小丸(しょうがん)を用(もち)ゆ。早く消化する故(ゆえ)也。今、新(あらた)なる一法(いつぽう)あり。用ゆべし。末薬(まつやく)をのりに和(わ)して、つねの如くに丸(がん)せず、線香(せんこう)の如く、長さ七八寸(しちはっすん)に、手にて、もみて、引(ひき)のべ、線香(せんこう)より少(すこし)大にして、日(ひ)にほし、なまびの時、長さ一分余に、みじかく切て丸せず、其(その)まゝ日(ひ)に、ほすべし。是(これ)一づゝ丸 (がん) したるより消化しやすし。上中部(じょうちゅうぶ)を治(ぢ)するに、此法(このほう)宜(よろ)し。下部(かぶ)に達する丸薬(がんやく)には、此法(このほう)宜(よろ)しからず。此法、一粒(ひとつぶ)づゝ丸(がん)ずるより、はか行きて早く成(な)る。
養生訓(意訳)
同じ薬も、飲み方、用法によって効果が異なる場合もあります。
通解
上中部の丸薬は早く消化されることが望ましいため、小丸を使用することが良いとされています。小丸は消化が早いため、効果が迅速に現れることが期待できます。ただし、新たな方法も存在しますので、試してみる価値があります。
新しい方法としては、末薬を糊に混ぜて丸めず、線香のように長さが7〜8寸(約17〜20センチメートル)ほどの長さにして、手でもんで引き延ばし、線香よりやや大きくして形作ります。その後、日に干し、乾いた状態で長さが1分余りの短さに切って丸めずに保存します。この方法により丸薬が消化しやすくなります。
この方法は上中部の消化を助けるために適していますが、下部まで届く丸薬には適していません。この方法により丸めたものは、一粒ずつ服用するよりも取り出して使用することで、速やかに成分が効果を発揮します。