養生訓357(巻第七 用薬)

凡(およそ)薬を煎ずるに、水をゑ(え)らぶべし。清(きょ)くして味よきを用(もち)ゆ。新(あらた)に汲(く)む水を用ゆべし。早天(そうてん)に汲(く)む水を井華水(せいかすい)と云(いう)。薬を煎ずべし。又、茶と羹(あつもの)をにるべし。新汲水(しんきゅうすい)は、平旦(へいたん)ならでも、新(あらた)に汲(く)んでいまだ器(うつわ)に入(いれ)ざるを云。是(これ)亦(また)用(もち)ゆべし。汲(くん)で器(うつわ)に入(い)れ、久しくなるは用(もち)ゆべからず。今世(こんせ)の俗(ぞく)は、利湯(りとう)をも、煎じたるかすに、水一盞(みずいつうき)入れて半分に煎じ、別にせんじたると合(あわ)せ服(ふく)す。利湯(りとう)は、かくの如く、かすまで熟(じゅく)し過(すご)しては、薬力(やくりき)よはくして、病をせむるにちからなし。一度煎じて、其(その)かすはすつべし。