養生訓379

中夏の書、居家必要(きょかひつよう)、居家必備(きょかひつび)、斉民要術(さいみんようじゅつ)、農政全書(のうせいぜんしょ)、月令広義(がつりょうこうぎ)等(とう)に、料理の法(ほう)を多くのせたり。其(そ)のする所、日本の料理に大(おお) いにかはり、皆、肥濃膏腴(ひのうこうゆ)、油膩(ゆに)の具(ぐ)、甘美(かんみ)の饌(せん)なり。其(その)食味(しょくみ)甚はなは(だ)おもし。中土(ちゅうど)の人は、腸胃(ちょうい)厚く、禀賦(ひんぷ)つよき故に、かゝる重味(じゅうみ)を食しても滞塞(たいそく)せず。今世、長崎に来る中夏人(ちゅうかじん)も、亦(また)此如(これらのごとく)と云(いう)。日本の人は壮盛(そうせい)にても、かたうの饌食(せんしょく)をくらはば飽満(ほうまん)し、滞塞(たいそく)して病おこるべし。日本の人の饌食(せんしょく)は、淡(あわ)くして、かろきをよしとす。肥濃甘美(ひのうかんび)の味を多く用(もち)ず。庖人(ほうじん)の術も、味(あじ)かろきをよしとし、良工(りょうこう)とす。これ、からやまと風気(ふうき)の大(おおいに)に異(こと)る処(ところ)なり。然(しか)れば、補薬(おやく)を小服(しょうふく)にし、甘草(かんぞう)を減じ、棗(なつめ)を少し、用(もちい)る事むべなり。

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