養生訓376

中華の書に、薬剤(やくざい)の量数(りょうすう)を、しるせるを見るに、八解散(はちげさん)など、毎服(まいふく)二匁(にもんめ)、水一盞(みずいちうき)、生姜(しょうが)三片(さんぺん)、棗(なつめ)一枚、煎(せん)じて七分(しちぶ)にいたる。是(これ)は一日夜(いちにちや)に、二三服(にさんぷく)も用(もち)ゆべし。或(あるい)は方(ほう)によりて、毎服三匁(まいふくさんもんめ)、水一盞(みずいちうき)半、生姜(しょうが)五片(ごへん)、棗(なつめ)一枚、一盞(いちうき)に煎じて滓(かす)を去(さ)る。香蘇散(こうそさん)などは、日に、三服といへり。まれには滓(かす)を一服として煎(せん)ずと云(いう)。多くは滓(かす)を去(さる)といへり。人参養胃湯(にんじんよういとう)などは、毎服四匁(まいふくよんもんめ)、水一盞半(みずいちうきはん)、生姜(しょうが)七片、烏梅(うばい)一箇(いっこ)、煎(せん)じて七分(しちぶ)にいたり、滓(かす)を去(さる)。参蘇飲(じんそいん)は毎服四匁(まいふくよんもんめ)、水一盞(みずいちうき)、生姜七片(しょうがななへん)、棗一箇(あんずいっこ)、六分(よくぶ)に煎ず。霍香生気散(かつこうしょうきさん)、敗毒散(はいどくさん)は、毎服二匁、水一盞(うき)、生姜(しょうが)三片、棗 (なつめ) 一枚、七分に煎ず。寒多きは熱服(ねつふく)し、熱多(ねつおお)きは温服(おんぷく)すといへり。是皆、薬剤一服の分量(ぶんりょう)は多く、水を用(もちい)る事すくなし。然(しか)れば、煎湯(せんとう)甚(はなはだ)濃(こく)なるべし。日本の煎法(せんぽう)の、小服(しょうふく)にして水多きに甚(はなはだ)異(かわ)れり。局方(きょくほう)に、小児には半餞(はんせん)を用ゆも児(こ)の大小を、はかつて加減(かげん)すといへり。又、小児(しょうじ)の薬方、毎服(まいふく)一匁(いちもんめ)、水八分(みずはちぶ)、煎じて六分(ろくぶ)にいたる、といへるもあり。医書大全(いしょだいぜん)、四君子湯方(しくんしとうほう)後(のちに)曰(いわく)、「右、きざむこと麻豆(まとう)の大(だい)の如(ごとし)。毎服一匁(まいふくいちもんめ)、水三盞(みずさんうき)、生姜(しょうが)五片、煎じて一盞(いちうき)に至(いた)る。是(これ)一服(いっぷく)を十匁(じゅうもんめ)に合(あわ)せたる也」。水は甚(はなはだ)少し。中夏(ちゅうか)の煎法(せんぽう)右の如し。朝鮮人に尋(たず)ねしにも、中夏の煎法(せんほう)と同じと云(いう)。

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