養生訓353(巻第七 用薬)
中華の書に、薬剤(やくざい)の量数(りょうすう)を、しるせるを見るに、八解散(はちげさん)など、毎服(まいふく)二匁(にもんめ)、水一盞(みずいちうき)、生姜(しょうが)三片(さんぺん)、棗(なつめ)一枚、煎(せん)じて七分(しちぶ)にいたる。是(これ)は一日夜(いちにちや)に、二三服(にさんぷく)も用(もち)ゆべし。或(あるい)は方(ほう)によりて、毎服三匁(まいふくさんもんめ)、水一盞(みずいちうき)半、生姜(しょうが)五片(ごへん)、棗(なつめ)一枚、一盞(いちうき)に煎じて滓(かす)を去(さ)る。香蘇散(こうそさん)などは、日に、三服といへり。まれには滓(かす)を一服として煎(せん)ずと云(いう)。多くは滓(かす)を去(さる)といへり。人参養胃湯(にんじんよういとう)などは、毎服四匁(まいふくよんもんめ)、水一盞半(みずいちうきはん)、生姜(しょうが)七片、烏梅(うばい)一箇(いっこ)、煎(せん)じて七分(しちぶ)にいたり、滓(かす)を去(さる)。参蘇飲(じんそいん)は毎服四匁(まいふくよんもんめ)、水一盞(みずいちうき)、生姜七片(しょうがななへん)、棗一箇(あんずいっこ)、六分(よくぶ)に煎ず。霍香生気散(かつこうしょうきさん)、敗毒散(はいどくさん)は、毎服二匁、水一盞(うき)、生姜(しょうが)三片、棗 (なつめ) 一枚、七分に煎ず。寒多きは熱服(ねつふく)し、熱多(ねつおお)きは温服(おんぷく)すといへり。是皆、薬剤一服の分量(ぶんりょう)は多く、水を用(もちい)る事すくなし。然(しか)れば、煎湯(せんとう)甚(はなはだ)濃(こく)なるべし。日本の煎法(せんぽう)の、小服(しょうふく)にして水多きに甚(はなはだ)異(かわ)れり。局方(きょくほう)に、小児には半餞(はんせん)を用ゆも児(こ)の大小を、はかつて加減(かげん)すといへり。又、小児(しょうじ)の薬方、毎服(まいふく)一匁(いちもんめ)、水八分(みずはちぶ)、煎じて六分(ろくぶ)にいたる、といへるもあり。医書大全(いしょだいぜん)、四君子湯方(しくんしとうほう)後(のちに)曰(いわく)、「右、きざむこと麻豆(まとう)の大(だい)の如(ごとし)。毎服一匁(まいふくいちもんめ)、水三盞(みずさんうき)、生姜(しょうが)五片、煎じて一盞(いちうき)に至(いた)る。是(これ)一服(いっぷく)を十匁(じゅうもんめ)に合(あわ)せたる也」。水は甚(はなはだ)少し。中夏(ちゅうか)の煎法(せんぽう)右の如し。朝鮮人に尋(たず)ねしにも、中夏の煎法(せんほう)と同じと云(いう)。
養生訓(意訳)
中国の古い医書に薬を煎じる方法について細かく書いてあります。日本の煎法では服用量が少なく、水の使用量が多いことが異なります。
通解
この中華の書には、薬の量と数についての記述があります。例えば、八解散という薬は、毎回2匁の量を服用し、水一盞、生姜3片、棗1枚を加えて煎じます。一日に2〜3回服用することが推奨されています。ただし、病状によっては、毎回3匁の量を服用し、水一盞半、生姜5片、棗1枚で煎じたり、滓を取り除いたりすることもあります。香蘇散などの場合は、1日に3回服用することが推奨されていますが、滓を1回として煎じることもあります。人参養胃湯の場合は、毎回4匁の量を服用し、水一盞半、生姜7片、烏梅1つを加えて煎じ、滓を取り除きます。参蘇飲は、毎回4匁の量を服用し、水一盞、生姜7片、棗1つを加えて6分間煎じます。霍香生気散や敗毒散の場合は、毎回2匁の量を服用し、水一盞、生姜3片、棗1枚で煎じます。寒さが多い場合は熱い服用、熱さが多い場合は温かい服用が推奨されています。
これらの処方は、一服あたりの薬の量が多く、水の使用量は少ないです。したがって、煎じた薬剤は濃いものになります。一方、日本の煎法では服用量が少なく、水の使用量が多いことが異なります。小児の場合は、服用量や水の使用量を調整する必要があります。医書大全には、四君子湯の処方後に「毎服一匁、水三盞、生姜五片で煎じて一盞に至る。これを10匁に合わせる」という記述があります。水の使用量は非常に少ないです。中夏の煎法も同様です。朝鮮人に尋ねたところ、中夏の煎法も同じであると言われました。