養生訓351(巻第七 用薬)
入門に、いへるは、薬を服するに、病(やまい)、上部(じょうぶ)にあるには、食後に少づゝ服(くふ)す。一時に多く、のむべからず。病(やまい)、中部(ちゅうぶ)に在(ある)には、食遠(しょくえん)に服(ふく)す。病(やまい)、下部(がぶ)にあるには、空心(くうしん)に、しきりに多く服して下(しも)に達すべし。病(やまい)、四肢(しし)、血脈(けつみゃく)にあるには、食(しょく)にうゑ(え)て日中(にっちゅう)に宜(よ)し。病(やまい)、骨髄(こつずい)に在(ある)には食後、夜に宜(よろ)し。吐逆(とぎゃく)して薬を納(おさめ)がたきには、只(ただ)一(ひと)すくひ、少(すこし)づゝ、しづかにのむべし。急に多くのむべからず。是(これ)薬を飲む法(ほう)也。しらずんば有(ある)べからず。
養生訓(意訳)
薬を飲むときは、その病と薬の性質に応じ、その決められた時間に、決められた量を服用したほうが良いでしょう。
通解
入門において、薬を服用する際の指針は次の通りです。
病気が上部にある場合:食事の後に少量ずつ服用する。一度に多く服用することは避けるべきです。
病気が中部にある場合:食事の間隔を空けて服用する。
病気が下部にある場合:空腹時に頻繁に多量の服用を行い、下部に到達するようにする。
病気が四肢や血管にある場合:食事に合わせて昼間に服用するのが適しています。
病気が骨髄にある場合:食事の後や夜に服用するのが良いでしょう。
吐逆(嘔吐や逆流)が起きて薬を摂取しにくい場合:少量ずつ、静かに服用することが重要です。急に多量を摂取することは避けるべきです。
これらの薬を服用する際は、これらを知らなければならないということです。