養生訓372

補湯(ほとう)は、煎湯(せんとう)熱き時、少づゝのめばつかえず。ゆるやかに験(げん)を得(う)べし。一時に多く服すべからず。補湯(ほとう)を服する間、殊(ことに)酒食を過(すご)さず、一切の停滞(ていたい)する物くらふべからず。酒食滞塞(たいそく)し、或(あるいは)薬を服し過(すご)し、薬力めぐらざれば、気をふさぎ、服中(ふくちゅう)滞(とどこお)り、食を妨(さまた)げて病をます。しるしなくして害あり。故に補薬(ほやく)を用(もち) る事、その節制(せっせい)むづかし。良医は、用(もちい)やう能(よく)してなづまず。庸医(ようい)は用やうあしくして滞(とどこお)る。古人(こじん)は、補薬(ほやく)を用(もちい)るその間に、邪(じゃ)をさる薬を兼(ね)用(もち)ゆ。邪気(じゃき)されば、補薬にちからあり。補(おぎない)に専一(せんいち)なれば、なづみて益なく、かへつて害あり。是(これ)古人(こじん)の説なり。

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