養生訓346(巻第七 用薬)
右、薬一服(くすりいっぷく)の分量(ぶんりょう)の大小、用水(ようせい)の多少(たしょう)を定むる事、予(よ)、医生(いせい)にあらずして好事(こうじ)の誚(そしり)、僣率(せんそつ)の罪、のがれたしといへども、今時(こんじ)、本邦(ほんぽう)の人の禀賦(ひんぷ)をはかるに、おそらくは、かくの如(ごとく)にして宜(よろ)しかるべし。願くば有識(ゆうしき)の人、博(ひろ)く古今(こきん)を考(かんが)へ、日本の人の生れ付(つき)に応(おう)じ、時宜(じぎ)にかなひて、過不及(かふきゅう)の差(さ)なく、軽重大小(けいじゅうだいしょう)を定め給ふべし。煎薬(せんやく)に加(くわ)ふる四味(よんみ)あり。甘草(かんぞう)は、薬毒(やくどく)をけし、脾胃(ひい)を補(おぎ)なふ。生姜(しょうが)は薬力(やくりき)をめぐらし、胃を開く。棗(なつめ)は元気を補(おぎな)ひ、胃をます。葱白(そうはく)は風寒(ふうかん)を発散(はっさん)す。是(これ)入門にいへり。又、燈心草(とうしんそう)は、小便(しょうべん)を通じ、腫気(しゅき)を消(け)す。
養生訓(意訳)
甘草、生姜、棗(なつめ)、ネギは、身体に良いと中国の古い医書に書いてあります。
通解
薬の一服の量や使用する水の量を定めることは、私は医師ではありませんが好意的な助言として述べているだけであり、医学的な正確さを保証するものではありません。ただし、現代の日本において、人々の体質を考慮すると、このような指針が適している可能性は高いと思われます。
願わくば、知識豊かな人々が広く古今を学び、日本の人々の生まれつきに応じ、適切な時宜にかなった量を定めることが重要です。適度な範囲内で、軽重や大きさを考慮して調整するべきです。
漢方薬には四つの味があります。甘草は薬の毒性を和らげ、脾胃を補います。生姜は薬の効力をめぐらし、胃を刺激します。棗は元気を補い、胃を整えます。葱の白い部分は風寒を発散させます。これらは基本的な知識です。
また、燈心草は利尿作用があり、むくみを解消する効果があります。