養生訓8(巻第一総論上)

「豈(あに)、楽まざるべけんや。命みじかければ、天下四海(てんかしかい)の富を得ても益(えき)なし。財(たから)の山を前につんでも用(よう)なし。
然(さ)れば道に、したがひ身をたもちて、長命(ちょうめい)なるほど大(おおい)なる福(さいわい)なし。
故に、寿(ことぶき)は、尚書(しょうしょ)に、五福(ごふく)の第一とす。

是(これ)万福(まんぷく)の根本なり。」

意訳

この世界のすべての財産を持っていても、命が短ければ何の役にも立たないものです。逆に、貧乏であっても養生の道を歩めば、長生きとなり、大きな幸せが待っています。だから、健康で長生きは、この世で最大の幸福です。

通解

人生はそれほど長くなく、世界中の富を得ても満たされることはないでしょう。不健康ならば、膨大な財産が前にあっても、何の役にも立ちません。ですから、道を守り、身を大切にし、長寿を得ることが真の幸福です。古代の経書である『尚書』では、「寿は五福の中で第一」とされ、万福の根本とされています。つまり、長寿は全ての幸福の基礎であるということを教えています。

「五福」(ごふく)とは

「五福」(ごふく)は、中国の伝統的な幸福や繁栄の象徴的な要素を表す概念です。これらの五福は、中国の文化や宗教、民間信仰において重要な役割を果たし、幸運や成功、幸福をもたらすと信じられています。五福は次のように表されます:

長寿(ちょうじゅ):長寿は健康で長生きすることを象徴します。長い寿命は幸福と豊かさのシンボルであり、多くの人々が望むものです。

富貴(ふうき):富貴は富と繁栄を意味し、経済的な成功や豊かさを象徴します。豊かな生活や成功した事業を望む願望が含まれます。

康健(こうけん):康健は健康であることを示し、身体的な健康と精神的な幸福を意味します。健康で元気な状態は、幸福な生活の重要な要素とされます。

安寧(あんねい):安寧は平和で安定した状態を表し、家庭や社会における安定と調和を意味します。紛争や困難から遠ざかり、安定した状況が幸福とされます。

賢明(けんめい):賢明は知恵や知識を示し、賢明さや知識の獲得を象徴します。知識と賢明さは成功と幸福への道を開くものとされます。

五福は、特に中国の新年や祭りの際に象徴的な要素として強調され、願い事や祈りの対象として重要視されます。また、五福を表す絵や彫刻が家庭や寺院、広場などで見られ、幸運や繁栄を呼び込むと信じられています。