養生訓334(巻第七 用薬)
病の初発(しょはつ)の時、症(しょう)を明(あきらか)に見付(みつけ)ずんば、みだりに早く薬を用ゆべからず。よく病症を詳(つまびらか)にして後、薬を用ゆべし。諸病の甚(はなはだ)しくなるは、多くは初発の時、薬ちがへるによれり。あやまつて、病症にそむける薬を用ゆれば、治(ち)しがたし。故に療治(りょうち)の要(よう)は、初発(しょはつ)にあり。病おこらば、早く良医をまねきて治すべし。症により、おそく治(じ)すれば、病ふかくなりて治(じ)しがたし。扁鵲(へんじゃく)が斉候(せいこう)に告げたるが如し。
養生訓(意訳)
病は初発の時が肝要です。
通解
病気が初めて発症した時、症状を明確に把握しなければ、無分別に早く薬を使用するべきではありません。まず病気の症状を詳しく観察し、その後に薬を使用するべきです。多くの病気は初めの段階で薬の選択を誤ることによって重症化します。誤った薬を使用すると、治療が困難になります。したがって、治療の要点は初期の段階にあります。病気が発生したら、早く優れた医師を呼んで治療すべきです。遅く治療すると、病気は深刻化し、治療が困難になります。このことは、古代中国の医師である扁鵲が言った教えと同様です。