養生訓355

脾胃(ひい)を養ふには、只(ただ)穀肉(こくにく)を食するに相宜(あいよろ)し。薬は皆(みな)気の偏(へん)なり。参芪(じんぎ)、朮甘(じゅつかん)は上薬(じょうやく) にて毒なしといへども、病に応ぜざれば胃の気を滞(とどこお)らしめ、かへつて病を生じ、食(しょく)を妨(さまた)げて毒となる。いはんや攻撃のあらくつよき薬は、病に応ぜざれば、大(おおいに) に元気をへらす。此故(このゆえ)に病なき時は、只(ただ)穀肉を以(もって)やしなふべし。穀肉の脾胃(ひい)をやしなふによろしき事、参芪(じんぎ)の補にまされり。故に、古人(こじん) の言に薬補(やくほ)は食補(しょくほ)にしかずといへり。老人は殊に食補すべし、薬補(やくほ)は、やむ事を得ざる時、用ゆべし。

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