養生訓316(第六巻 択医)
医となる者、時(とき)の幸(さち)を得(え)て、富貴(ふうき)の家に用(もち)いらるゝ福医(ふくい)をうらやみて、医学をつとめず、只(ただ)、権門(けんもん)につねに出入(でいり)し、へつらひ求めて、名利(みょうり)を得(え)る者多し。医術のすたりて拙(うたな)くなり、庸医(ようい)の多くなるは此(この)故なり。
養生訓(意訳)
医者になる者の中には、富や名声がある医者を羨んで、権力に媚び諂い、己の志を落として名利を得る者が多くいます。医術の廃れる原因は、ここにあります。
通解
医者になる人の中には、時の幸運を得て富貴な家庭に仕える福のある医師を羨ましく思い、医学に励むことなく、ただ権力者の側に常に出入りし、お世辞を言い捧げて名声と利益を得ようとする者が多く存在します。その結果、医術が失われて未熟な医師が増えるのは、このためです。