養生訓317(第六巻 択医)
諸芸(しょげい)には、日用(にちよう)のため無益(むえき)なる事多し。只(ただ)、医術(いじゅつ)は有用(ゆうよう)の事也。医生(いせい)にあらずとも少(すこ)し、学ぶべし。凡(およそ)儒者は天下の事(こと)皆しるべし。故に、古人(こじん)、医も儒者の一事(いちじ)といへり。ことに医術(いじゅつ)はわが身をやしなひ、父母につかへ、人を救ふに益あれば、もろもろの諸芸(しょげい)よりも最(もっとも)益多し。しらずんばあるべからず。然(しかれ)ども医生(いせい)に非(あら)ず、療術(りょうじゅつ)に習(なら)はずして、妄(みだり)に薬を用(もち)ゆべからず。
養生訓(意訳)
世の中には、いろいろな技術があります。その中で、医学は健康に暮らす上で重要な知識です。医者でなくても、必要最低限の医学の知識は知っていたほうが良いでしょう。
通解
諸芸の中には、日常生活には無益なものが多く存在しますが、ただ医術だけは有用なものです。医師でなくても少しは学ぶべきです。一般の学者は天下の事柄を全て知るべきです。そのため、古代の人々は医術も学者の一分野と考えていました。特に、医術は自分自身を守るだけでなく、親や家族、他人を救うのに役立ちますので、他の諸芸よりも非常に有益です。これを知らないことはあってはなりません。ただ、医師でない人が無闇に薬を使うことは避けるべきです。