養生訓337

医を学ぶに、ふるき法をたづねて、ひろく学び、古方(こほう)を多く考ふべし。又、世(よ)の時運(じうん)を考(かんが)へ、人の強弱(きょうじゃく)をはかり、日本の土宜(どぎ)と民俗(みんぞく)の風気(ふうき)を知り、近古(きんこ)わが国(くに)先輩(せんぱい)の名医(めいい)の治(ち)せし跡(あと)をも考へて、治療を行ふべし。いにしへに本づき、今に宜(よろ)しくば、あやまりすくなかるべし。古法(こほう)をしらずして、今の宜(よろしき)に合(あわ)せんとするを鑿(うがつ)と云。古法(こほう)にかゝはりて、今の宜(よろしき)に合(あわ)ざるを泥(なずむ)と云。其(その)あやまり同じ。古(いにしえ)にくらく、今に通ぜずしては、医道(いどう)行(おこ)はるべからず。聖人(せいじん)も、故(ふるき)を温(たず)ね新(あたわしき)を知(しる)以(もっ)て師(し)とすべし、と、のたまへり。医師も亦(また)かくの如くなるべし。

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