養生訓313(第六巻 択医)
医は、仁心(じんしん)を以(もっ)て行ふべし。名利(みょうり)を求むべからず。病(やまい)おもくして、薬にて救(すく)ひがたしといへども、病家(びょうけ)より薬を求むる事(こと)切(せっ)ならば、多く薬をあたへて、其心(そのこころ)ををなぐさむべし。わがよく病を見付(みつけ)て、生死をしる名(な)を得(え)んとて、病人に薬をあたへずして、すてころすは情(なさ)けなし。医の薬をあたへざれば、病人(びょうにん)いよいよちからをおとす。理(り)なり。あはれむべし。
養生訓(意訳)
医者は、回復の見込みのないと思う患者にも、最大限の治療を行うべきです。医者が諦めたら、患者はより力を落とします。
通解
医者は、仁心を持って行動するべきです。名誉や利益を求めるべきではありません。重い病に苦しむ人が薬によって救われることは望ましいですが、病人の家から薬を求めることが切実な場合でも、薬を多く提供するだけでなく、その心情に寄り添うべきです。
そして、不治の病であっても、薬を与えなければ、病人はますます力を失っていくでしょう。誠心誠意寄り添いましょう。