養生訓305(第六巻 択医)
医となる者、家にある時は、つねに医書を見て、其(その)理(り)をあきらめ、病人を見ては、又、其病(そのやまい)をしるせる方書(ほうしょ)をかんがへ合せ、精(くわ)しく心を用(もち)ひて薬方(やくぽう)を定むべし。病人を引うけては、他事(たじ)に心を用(もち)ひずして、只(ただ)、医書を考へ、思慮(しりょ)を精(くわ)しくすべし。凡(およそ)医は医道に専一(せんいち)なるべし。他の玩好(がんこう)あるべからず。専一ならざれば業(ぎょう)精(くわ)しからず。
養生訓(意訳)
医者になった者は、過去の経験に頼るだけでなく、新たな医学の知識を得るために日夜、研鑽しなければなりません。医道意外のことに、目を奪われてはいけません。
通解
医者となる者は、家にいる時も常に医書を参照し、その理を深く理解するべきです。また、病人を診る際には、その病気に関する方書を参照し、精密に心を使って処方を定めるべきです。病人を診る際には、他のことに心を使わず、ただ医書を考え、慎重に思慮するべきです。一般的な医者は医道に専念するべきであり、他の娯楽に熱中するべきではありません。専念しなければ、業の精度は高まりません。