養生訓283(第六巻 慎病)
病ある人、養生の道をば、かたく慎(つつ)しみて、病をば、うれひ苦しむべからず。憂(うれ)ひ苦しめば、気ふさがりて病(やまい),くはゝる。病おもくても、よく養(やしな)ひて久(ひさ)しければ、おもひしより、病いえやすし。病をうれひて益なし。只、慎むに益あり。もし必死の症(しょう)は、天命(てんめい)の定(さだま)れる所、うれひても益なし。人をくるしむるは、おろかなり。
養生訓(意訳)
仮に、病気になっても憂い苦しんだりしない方が良いです。憂い苦しめば悪くなります。ただ、養生の道を続ければ良いのです。憂いても何の益にもなりません。何があっても養生を続けていれば後悔だけは、ありません。周囲を苦しめるのは愚かです。
通解
病気のある人は、養生の方法を厳格に守り、病気を苦にせずに受け入れるべきです。悲嘆や苦悩は、気を閉じ込め、病気を悪化させることがあります。病気が重くても、適切に養生をし続ければ、思ったよりも回復しやすくなります。病気を苦にすることは何の益にもなりません。ただし、絶望的な状態にある場合は、それが運命と悟り、その場合には苦しむことは無駄です。他人を苦しめることは愚かな行為です。