養生訓280(第六巻 慎病)
古語(こご)に、病は少し癒(いゆ)るに加(くわ)はるといえり。病少しいゆれば、快(こころよ)きをたのんで、おこたりてつつしまず。少し、快(こころよ)しとして、飲食、色慾など恣(ほしいまま)にすれば、病(やまい)かへつておもくなる。少し、いゑ(え)たる時、弥(いよいよ)かたくおそれつつしみて、少(すこし)のやぶれなくおこたらざれば、病(やまい)早くいえて再発のわざはひなし。此時(このとき)かたくつつしまざれば、後悔すとも益なし。
養生訓(意訳)
大病なると苦しみが多いです。大病になったことを思えば、小欲を慎むことは簡単です。少欲とは不摂生のことです。不摂生は、後のわざわいの元です。
通解
昔の教訓には、病気が少しでも良くなると、油断が生じると言われています。つまり、病気が少し回復したからといって、安心して油断してはいけないということです。病気がわずかに良くなったときには、特に注意が必要で慎重に行動するべきです。少し病気が良くなったからといって、無謀に飲食や快楽にふけると、病気は再び悪化する可能性があります。少しでも良くなった段階で、ますます慎重に生活し、リスクを避けることが大切です。この段階で注意を怠ると、後々、後悔することになります。