養生訓261(巻第五 五官)

牙歯(がし)をみがき、目を洗ふ法(ほう)、朝ごとに、まづ熱湯(ねっとう)にて目を洗(あら)ひあたため、鼻中(びちゅ)をきよめ、次に温湯(おんとう)にて口をすゝぎ、昨日よりの牙歯(がし)の滞(とどこおり)を吐(はき)すて、ほしてかは(わ)ける塩を用ひて、上下(じょうげ)の牙歯(がし)と、はぐきをすりみがき、温湯(おんとう)をふくみ、口中をすゝぐ事ニ三十度(たび)、其間(そのあいだ)に、まづ別の碗に、温湯(おんとう)を、あら布(ぬの)の小篩(こふるひ)を以(もって)こして入れ置(おき)、次に手と面(かお)をあらひ、おはりて、口にふくめる塩湯(しおゆ)を、右のあら布の小ぶるひにはき出し、こして碗に入れ、其(その)塩湯を以(もって) 目を洗ふ事、左右(さゆう)各(おのおの)十五度(たび)、其後(そののち)べちに入置きたる碗(わん)の湯(ゆ)にて、目を洗ひ、口をすすぐべし。是にておはる。毎朝(まいちょう)かくのごとくにして、おこたりなければ、久しくして牙歯(がし)うごかず。老(おい)てもおちず。虫くはず。目あきらかにして、老(お)にいたりても、目の病なく、夜、細字(ほそじ)をよみ書く。是(これ)目と歯とをたもつ良法なり。こゝろみて、其(その)しるしを得(え)たる人多し。予(よ)も亦(また)、此法によりて、久(ひさ)しく行なふゆへ、そのしるしに、今八十三歳にいたりて、猶(なお)夜、細字(ほそじ)をかきよみ、牙歯(がし)固くして一(ひとつ)もおちず。目と歯に病なし。毎朝かくのごとくすれば、久しくして後(のち)は、ならひてむづかしからず、牙杖(ようじ)にて、牙歯(がし)をみがく事を用(もち)ひず。

気づき

文章によると、まず毎朝、熱湯で目を洗ってから鼻をかみ、温湯で口をすすぎ、歯垢を取るために塩を使って歯磨きをします。その後、温かい塩水で口をすすいで口の中を清潔に保ち、目の疲れをとるために温かい塩水で目を洗います。

この健康法を毎日実践することで、虫歯や目の病気を防ぎ、高齢になっても目や歯のトラブルが起きにくくなるとされています。

当時と違い現代では様々な口腔ケアが開発されていますね。自分の状況や環境により自分にあった方法を選択することも必要かも知れませんね。