養生訓255
たばこは、近年、天正(てんしょう)、慶長(けいちょう)の比(ころ)、異国よりわたる。淡婆姑(たんぱこ)は和語にあらず。蛮語也(ばんごなり)。近世の中華の書に多くのせたり。又、烟草(えんそう)と云。朝鮮にては南草(なぐさ)と云。和俗これを莨(ろう)とうとするは誤れり。ろうとうは別物なり。烟草は性毒あり。煙をふくみて眩(めま)ひ倒る事あり。習へば大なる害なく、少は益ありといへ共、損多し。病をなす事あり。又、火災のうれひあり。習へばくせになり、むさぼりて後には止めがたし。事多くなり、いたつがはしく家僕を労す。初より、ふくまざるにしかず。貧民は費(ついえ)多し。
養生訓(意訳)
煙草は基本的に毒です。吸うと目が回り倒れることがあります。たばこが原因で病気になることもあります。火事の危険性もあります。一度吸い出したら止めることが難しいので最初から吸わないようにしましょう。たばこの支出は贅沢な浪費です。
通解
たばこは、近年、天正や慶長のころ、異国から日本に伝わってきました。”淡婆姑”という言葉は日本語ではなく、蛮語(異国の言葉)です。近世の中国の文献に多く見られます。また、「烟草」とも呼ばれます。朝鮮では「南草」とも言いますが、これは和語の「莨(ろう)とう」とは異なります。莨とうとは別の植物です。
たばこには性毒が含まれており、煙を吸い込むことでめまいや倒れることがあります。習慣化すると大きな害が出ることは少なくないですが、少量であれば益もあると言われています。しかし、損も多いですし、健康を害することもあります。また、たばこが原因で火災が発生することもあります。たばこは習慣になるとやめることが難しく、多くの問題を引き起こします。始めなければ問題はないわけではありません。特に貧しい人々はたばこの消費に多くの費用をかけることになります。
気づき
天政や慶長といえば、戦国時代をイメージしますね。たばこの伝来は、ポルトガル人が持ってきたとの説がありますね。

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