養生訓111

養生の術、荘子(そうし)が所謂(いわゆる)、庖丁(ほうちょう)が牛をときしが如くなるべし。牛の骨節(こっせつ)のつがひは間(ひま)あり。刀(かたな)の刃(は)はうすし。うすき刃をもつて、ひろき骨節の間に入れば、刃のはたらくに余地ありてさはらず。こゝを以て、十九年牛をときしに、刀新(かたないらた)にとぎたてたるが如しとなん。人の世にをる、心ゆたけくして物とあらそはず、理に随(したが)ひて行なへば、世にさはりなくして天地ひろし。かくのごとくなる人は命長し。

意訳

昔の人は言っています。毎日、肉を切る包丁も肉の筋にそって使えば十九年使っても新品のように使えます。身体も同じように正しい生活習慣をすれば長寿になります。

通解

養生の方法は、荘子は、「庖丁で牛を解体する時、牛の骨と筋肉は間に広い骨と筋肉の隙間に入れると無理なく捌くことが出来ます。このようにすれば、19年間も使い込んだ庖丁でも新たに研ぎたてた刀のように使えます。世の中も人は物事と争わず自然の流れに従って行動すれば、世間の喧騒に巻き込まれずに広大な天地の中で平和に暮らせる」と述べています。この言葉の通りすれば長生きできます。

気づき

包丁に限らず、バイクや車にも同じような事がいえそうですね。小まめに、オイルなどを交換してメンテナンスすれば予想の耐用年数と性能が維持できます。そして、故障した時も、原因の確認が早く出来ます。やっぱり、心と身体も、メンテが大切かも知れませんね。

「荘子」とは
「荘子」は、古代中国の哲学者である荘子の哲学的な著作です。荘子は紀元前4世紀頃に活動し彼の名前を冠したこの著作は彼の思想や哲学的見解をまとめたもので古代中国の思想史において重要な位置を占めています。荘子の著作には、譬え話、寓話、哲学的な議論などが含まれており、自然の中での個人の位置、相対性、夢と現実の境界、自己の認識、道の追求など、様々な主題が取り上げられています。彼の哲学的アイデアは、後の時代の中国哲学や文学に大きな影響を与えました。

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