養生訓87(巻第二総論下)

胃(い)の気とは,元気の別名(べっめい)なり。冲和(ちゅうわ)の気(き)也(なり)。病(やまい)甚(はなはだ)しくしても、胃の気ある人は生(い)く。胃の気なきは死す。胃の気の脉(みやく)とは、長からず、短からず、遅(ち)ならず、速(そく)ならず、大ならず、小ならず、年に応ずる事、中和(ちゅうわ)にしてうるはし。此脉(このみやく)、名づけて言(いい)がたし。ひとり、心に得(う)べし。元気衰(おとろ)へざる無病の人の脉(みやく)かくの如し。是(これ)古人(こじん)の説なり。養生の人、つねに此脉(このみやく)あらんことをねがふべし。養生なく気へりたる人は、わかくしても此脉とも乏(とぼ)し。是病人なり。病脉(びょうみゃく)のみ有て、胃の気の脉(みゃく)なき人は死す。又、目に精神ある人は寿(いのちなが)し。精神なき人は夭(いのちみじか)し。病人をみるにも此術を用(もち)ゆべし。

意訳

胃の気は、元気の源といいます。重い病気の方でも生命力のある人は生き抜く力があります。また、目に生命力がある人は長生きします。

通解

胃の気とは、元気の別名です。冲和の気とも呼ばれます。病が重くても、胃の気のある人は生き延びます。しかし、胃の気がない人は死に至ります。胃の気の脈は、長くも短くもなく、遅くも速くもなく、大きくも小さくもなく、年齢に応じた調和の取れた脈です。この脈を「言脈」と名付けており、心得るべきことです。元気が衰えていない健康な人の脈も、このような特徴を持っています。これは古代の知恵です。

養生を心がける人は、常にこのような脈を持つことを望むべきです。養生を怠ると、元気の脈が乏しくなります。これは病気の兆候となります。病気の脈だけが存在し、胃の気の脈がない人は死にます。また、目に精神がある人は長生きし精神がない人は早世します。病気の診断においても、この知識を活用すべきです。

気づき

体の調子が悪い時は元気が出ません。やっぱり、やっぱり、体と精神は一体なのでしょうか。

「胃の気」とは

「胃の気」という言葉は、通常、伝統的な東洋医学や中国の伝統医学において使用される概念です。これは、体内のエネルギーまたは生命力の一部を表すもので、特に胃に関連するエネルギーを指すことが多いです。

伝統的な東洋医学では、人間の健康は体内のエネルギーの流れとバランスに依存しており胃の気もその一部です。胃の気が適切にバランスされ正常に機能することが重要で、それが食物の消化や栄養の吸収に影響を与えます。

胃の気が不足すると、食欲不振、胃の不快感、便秘などの問題が発生する可能性があります。逆に、胃の気が過剰になると胃酸の過剰分泌や消化不良などの症状が現れることがあります。

伝統的な東洋医学のアプローチでは、食事療法、鍼灸、漢方薬などを使用して胃の気を調整しバランスを取る方法があります。